2014 年 94 巻 p. 217-236
本論の目的は二つの制度的圧力下にあった戦後日本におけるキリスト教系大学の成立と適応のメカニズムを明らかにすることにある。まず,高等教育組織の成立と適応の意味を明らかにし,次に国際基督教大学の事例研究からそれら概念を実証する。国際基督教大学は,戦前に歴史を持たず,またキリスト教と高等教育という二つの制度下にあったという意味で特徴的な事例である。
第一に,高等教育組織,その環境,そしてその適応という概念を明らかにする。高等教育組織とは制度化された公式組織であり制度的源泉に依存する。その環境とは集合的に制度的生活の認識された領域を構築する組織フィールドであると言える。そして,組織は文化・認知的概念,とくに制度的論理によってフィールドに適応する。
第二に,戦後日本における国際基督教大学の成立と適応のプロセスについて論じる。国際基督教大学は,既存のキリスト教系大学と占領期という,二つの制度による環境の複雑性を抱えていた。国際基督教大学は,学問的卓越性と日本の「発展」という論理を使用して,この複雑性を処理した。
国際基督教大学の成立と適応の分析を通じて,組織と環境間における文化・認知的概念を通じた制度的メカニズムの存在が示唆される。