栄養学雑誌
Online ISSN : 1883-7921
Print ISSN : 0021-5147
ISSN-L : 0021-5147
原著
高β-グルカン含有大麦の摂取が自然発症ApoE欠損マウスの脂肪組織の炎症と動脈硬化に及ぼす影響
加藤 美智子池上 幸江青江 誠一郎
著者情報
ジャーナル フリー

2013 年 71 巻 4 号 p. 196-203

詳細
抄録

【目的】高脂肪食の摂取は,白色脂肪組織の活性酸素種(ROS)の生成を促進し,酸化ストレスを増大して動脈硬化の発症を促進する可能性があることが示唆されている。本研究では,新規に育種された国産の高β-グルカン含有大麦ならびにβ-グルカン欠失大麦の摂取が,自然発症ApoE欠損マウスの脂肪組織の炎症と動脈硬化に及ぼす影響を比較することにより,大麦中のβ-グルカンの作用を評価した。
【方法】5週齢のC57BL/6 系統のApoE欠損マウスに高コレステロール・高脂肪食を与えた。飼料中のβ-グルカン含量は,高β-グルカン含有大麦群が2.1 %,β-グルカン欠失大麦群が0.0%となった。各飼料と水は55日間自由摂取させた。心臓の大動脈弁の切片はOil Red Oで,摘出した大動脈はズダンIVで染色した。脂肪組織の炎症に関わるmRNA発現量はリアルタイムPCR法,血清インスリン濃度はELISA法にて分析した。
【結果】活性酸素を生成するNADPHオキシダーゼを構成するサブユニットp67phox,p47phox,p40phox,脂肪組織の炎症に関わるMCP-1,F4/80,TNF-αのmRNA発現量ならびに血清インスリン濃度は,高β-グルカン含有大麦群がβ-グルカン欠失大麦群に比べて,有意に低かった。また,心臓の大動脈弁の脂質沈着面積は,高β-グルカン含有大麦群がβ-グルカン欠失大麦群に比べて,有意に低値を示した。一方,大動脈の脂質沈着面積には各群間に有意差が見られなかった。
【結論】大麦中のβ-グルカンが脂肪組織の抗炎症作用ならびに抗動脈硬化作用に関与している可能性が示唆された。

著者関連情報
© 2013 特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
前の記事 次の記事
feedback
Top