2023 年 81 巻 5 号 p. 202-209
【目的】飲酒に関する教育の一助となることを目指し,飲酒状況と機能的,伝達的,批判的の3つのヘルスリテラシー(以下,HL)との関連を示すことを目的とした。
【方法】2020年11月実施のインターネット調査のデータを用い,20~64歳の男性3,010人,女性2,932人を対象とした。HLは,機能的,伝達的,批判的の3つのレベルごとに用いた。飲酒状況は,「非飲酒・生活習慣病のリスクを高める飲酒量(以下,高リスク量)未満」「高リスク量」に分類した。HL得点は,男女それぞれの中央値で高群と低群に分類した。HLを独立変数,飲酒状況を従属変数として,ロジスティック回帰分析により各HL高群における「高リスク量」のオッズ比を男女別に算出した。
【結果】属性を調整した結果,女性では飲酒状況とレベルごとのHLに関連はみられなかったものの,HL総得点高群に高リスク量の者が少なかった (オッズ比 [95%信頼区間]:0.69 [0.54~0.88])。男性において,属性を調整しない結果では,高リスク量の者が機能的HL高群に少なく,批判的HL高群に多かったが,属性の調整により飲酒状況と各HLに関連はみられなくなった。
【結論】本研究では飲酒状況とレベルごとのHLの関連を検討したが,有意な関連はみられなかった。女性では,生活習慣病のリスクを高める飲酒量の防止に向け,総合的なHLを高める重要性が示唆された。