栄養学雑誌
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81 巻, 5 号
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原著
  • 濱下 果帆, 赤松 利恵
    原稿種別: 原著
    2023 年 81 巻 5 号 p. 193-201
    発行日: 2023/10/01
    公開日: 2023/11/23
    ジャーナル フリー

    【目的】Epicurean eating(美食家の食の楽しみ)尺度の日本語版の作成に向け,妥当性と信頼性を検討すること。

    【方法】2021年9月,東京都在住の20~64歳勤労者1,000人を対象に,インターネット調査を行った。Epicurean eating尺度は計13項目7件法でたずねた。天井効果,床効果による項目選定後,主成分分析を行った。信頼性はクロンバックα係数と再検査法,妥当性は属性や咀嚼習慣などの食生活の項目を用いて検討した。

    【結果】項目選定と主成分分析の結果,「美食家志向」は7項目,「スーパーサイズ嗜好」は4項目となった。再検査法による信頼性の検討では,「美食家志向」「スーパーサイズ嗜好」ともに良好な値が得られたが,クロンバックα係数による検討では,「スーパーサイズ嗜好」の値がやや低かった。妥当性では属性や咀嚼習慣などで妥当な結果が得られ,女性で「美食家志向」得点が高かった(p<0.001)。「美食家志向」得点と「スーパーサイズ嗜好」得点には負の相関(ρ=-0.16,p<0.001)がみられた。

    【結論】2成分11項目からなるEpicurean eating尺度の日本語版を作成した。下位尺度「美食家志向」は,信頼性と妥当性を有することを確認した。「スーパーサイズ嗜好」もある程度の信頼性と妥当性を有していたが,日本人に適した項目作成や尺度のニーズの検討の必要性も示唆された。

  • 大内 実結, 赤松 利恵, 新保 みさ, 小島 唯
    原稿種別: 原著
    2023 年 81 巻 5 号 p. 202-209
    発行日: 2023/10/01
    公開日: 2023/11/23
    ジャーナル フリー

    【目的】飲酒に関する教育の一助となることを目指し,飲酒状況と機能的,伝達的,批判的の3つのヘルスリテラシー(以下,HL)との関連を示すことを目的とした。

    【方法】2020年11月実施のインターネット調査のデータを用い,20~64歳の男性3,010人,女性2,932人を対象とした。HLは,機能的,伝達的,批判的の3つのレベルごとに用いた。飲酒状況は,「非飲酒・生活習慣病のリスクを高める飲酒量(以下,高リスク量)未満」「高リスク量」に分類した。HL得点は,男女それぞれの中央値で高群と低群に分類した。HLを独立変数,飲酒状況を従属変数として,ロジスティック回帰分析により各HL高群における「高リスク量」のオッズ比を男女別に算出した。

    【結果】属性を調整した結果,女性では飲酒状況とレベルごとのHLに関連はみられなかったものの,HL総得点高群に高リスク量の者が少なかった (オッズ比 [95%信頼区間]:0.69 [0.54~0.88])。男性において,属性を調整しない結果では,高リスク量の者が機能的HL高群に少なく,批判的HL高群に多かったが,属性の調整により飲酒状況と各HLに関連はみられなくなった。

    【結論】本研究では飲酒状況とレベルごとのHLの関連を検討したが,有意な関連はみられなかった。女性では,生活習慣病のリスクを高める飲酒量の防止に向け,総合的なHLを高める重要性が示唆された。

  • ─30~59歳を対象としたweb調査による縦断研究─
    髙泉 佳苗
    原稿種別: 原著
    2023 年 81 巻 5 号 p. 210-218
    発行日: 2023/10/01
    公開日: 2023/11/23
    ジャーナル フリー
    電子付録

    【目的】食生活リテラシーと食環境の認知(食品へのアクセス,情報へのアクセス)および食行動との因果関係を明らかにすることを目的とした。

    【方法】社会調査会社に登録している30~59歳のモニターから9,030人を層化抽出し,web調査による縦断研究を実施した。ベースライン調査は2018年10月に実施し,追跡調査は2019年10月に実施した。ベースライン調査と追跡調査を回答した解析対象者は2,331人(男性1,200人,女性1,131人)であった。食生活リテラシー得点,食品へのアクセス得点,情報へのアクセス得点,食行動得点の変化量(2019年-2018年)を算出し,因果モデルを作成してパス解析を行った。

    【結果】男性の食生活リテラシー得点は2018年から2019年で有意に減少していた(p=0.027)。食生活リテラシー得点の変化量は,食品へのアクセス得点の変化量(パス係数=0.07,p<0.01)と情報へのアクセス得点の変化量(パス係数=0.14,p<0.001),食行動得点の変化量(パス係数=0.07,p<0.05)に影響していた。女性の食生活リテラシー得点は有意な経時変化を認めず(p=0.47),食生活リテラシー得点の変化量は,情報へのアクセス得点の変化量(パス係数=0.10,p<0.01)と食行動得点の変化量(パス係数=0.13,p<0.001)に影響していた。

    【結論】食生活リテラシー得点の向上が食環境の認知得点と食行動得点の向上に及ぼす影響度は強くないが,食生活リテラシーは食環境の認知および食行動の促進要因の一つであることが示された。

  • ─妊娠の確率を上げるために摂取している者の特徴─
    新保 みさ, 和田 安代, 島田 美樹子, 上岡 洋晴
    原稿種別: 原著
    2023 年 81 巻 5 号 p. 219-227
    発行日: 2023/10/01
    公開日: 2023/11/23
    ジャーナル フリー
    電子付録

    【目的】妊娠のために活動をしている「妊活者」の適切な健康食品・サプリメント(以下,健康食品等)利用に必要な戦略を検討するため,健康食品等の摂取目的を調べ,摂取目的に妊娠の確率を上げることが含まれる者の特徴を調べた。

    【方法】2022年1月に調査会社登録者の25~39歳,女性,既婚,子どもを有さない者で,妊活中,過去の出産や妊娠経験なし,現在,健康食品等を摂取している1,820名に横断的なWEB調査を実施し,900名に到達するまで回答を収集した。調査項目は健康食品等の摂取目的,年齢や妊活状況,情報源,食生活や健康食品等の摂取状況などだった。

    【結果】897名(99.7%)を解析対象者とした。摂取目的で,妊娠の確率を上げるためを選択した者397名(妊娠確率向上目的群)とそれ以外の2群に分けた。妊娠確率向上目的群の年齢の中央値(25,75パーセンタイル値)は33(30,38)歳でそれ以外の群(32(29,36)歳)と比べて高く(p<0.001),妊活期間が長い者(p<0.001),不妊治療の医療機関等や妊活コミュニティから情報を得ている者が多かった(p<0.001)。食生活では副菜をとり(p=0.010),健康食品等の種類数の多い者が多かった(p<0.001)。

    【結論】妊活者には,妊娠の確率を上げるために健康食品等を摂取している者がおり,その特徴として年齢が高く,妊活期間が長く,不妊治療の医療機関等や妊活コミュニティから情報を得て,副菜や多数の健康食品等を摂取していることが示された。

  • 西坂 尚子, 塩澤 伸一郎, 中山 耕造, 廣瀬 憲一
    原稿種別: 原著
    2023 年 81 巻 5 号 p. 228-236
    発行日: 2023/10/01
    公開日: 2023/11/23
    ジャーナル フリー

    【目的】食事療法と運動療法は,2型糖尿病治療の重要な柱となっている。しかしながら継続率は低い。生体電気インピーダンス法(BIA: bioelectrical impedance analysis)を用いて2型糖尿病患者における運動や食事による体組成変化の報告は多くあるが,体組成の変化を示して栄養指導した場合の指導効果に関する先行研究は見当たらなかった。そこで本研究では,BIAを用いて体組成を測定し栄養指導時にその客観的な指標を示すことにより,2型糖尿病患者に食事療法や運動療法の重要性を訴え,その効果を判定することを目的とした。

    【方法】2型糖尿病患者を,BIAで測定した体組成のデータを用いて栄養指導を行った群9名(A群),BIAでの測定を行わず栄養指導のみを行った群12名(B群),さらにBIAでの測定も栄養指導も行わなかった群20名(C群)の3群に分け,栄養指導開始時と6か月後のHbA1cを測定し各群で比較した。また,BIAを用いて骨格筋量,体脂肪量を測定し,骨格筋量/体脂肪量の比を算定した。

    【結果】6か月後のhemoglobin A1c(HbA1c)はA群とB群ともに有意に減少したが,C群は変化がなかった。6か月後のA群のHbA1cはC群より有意に低値を示した。さらにA群の骨格筋量/体脂肪量は6か月後,有意に増加した。

    【結論】2型糖尿病治療の栄養指導は単独でも有効であるが,客観的なBIAのデータを患者に示しながら栄養指導した場合,より効果が高くなる可能性が示唆された。

研究ノート
  • 中易 萌香, 赤松 利恵
    原稿種別: 研究ノート
    2023 年 81 巻 5 号 p. 237-245
    発行日: 2023/10/01
    公開日: 2023/11/23
    ジャーナル フリー

    【目的】調理を推奨するアプローチの検討に向けて,調理頻度に関わる要因を男女別に探ることを目的とした。

    【方法】本研究は,2012年の「食育に関する意識調査」のデータを用いた横断研究である。全国の満20歳以上の男女1,773人を対象とし,調理頻度により「週6日以下」「毎日」の2群に分け,属性と食意識,食知識をロジスティック回帰分析により男女別に比較した。

    【結果】調理頻度が毎日の者は,男性10.5%,女性77.8%であった。男性では,50代と60代の者[各々オッズ比7.48 (95%信頼区間1.28~43.81),8.50 (1.49~48.67)],一人暮らしの者[36.00 (12.73~101.82)],食知識が高い者[5.51 (2.24~13.55)]は,各々の基準 (20代の者,一人暮らしをしていない者,食知識が低い者) と比べて毎日調理をする者が多かった。女性では,男性と同様の特徴に加え,配偶者がいる者[7.53 (4.81~11.80)],無職の者[2.66 (1.64~4.32)]は,各々の基準 (配偶者がいない者,雇用者) と比べて毎日調理をする者が多かった。

    【結論】調理頻度に関わる要因として,男女とも居住形態が関係していたが,婚姻状況との関連は男女で異なっていた。今後は,配偶者のいる男性に対して調理を促すアプローチを検討する必要性が示唆された。

  • 多田 由紀, 吉﨑 貴大, 横山 友里, 竹林 純, 岡田 恵美子, 瀧本 秀美, 石見 佳子
    原稿種別: 研究ノート
    2023 年 81 巻 5 号 p. 246-259
    発行日: 2023/10/01
    公開日: 2023/11/23
    ジャーナル フリー
    電子付録

    【目的】日本版栄養プロファイルモデル試案(以下,NPモデル試案)の実行可能性を検討するため,活用方法を啓発するための資料(以下,活用資料案)を作成し,インターネット調査を実施して食習慣改善意欲の有無による課題やニーズを把握した。

    【方法】NPモデル試案及び諸外国の資料等を参照して活用資料案(全4頁,A3両面1枚)を作成し,18歳以上の消費者3,000名を対象にインターネット調査を実施した。国勢調査の性別,年代,地域の分布を考慮し,食習慣改善意欲は令和元年国民健康・栄養調査と同程度の割合を確保した。参加者は活用資料案を読み,NPモデル試案の活用可能性等を回答した。現在の食習慣改善意欲から,改善意欲なし群(n=1,187),改善意欲あり群(n=1,465),自身の食習慣に問題はない認識の群(n=348)の3群に分類し,回答状況を比較した。

    【結果】活用資料案は,全頁で90%以上の参加者がわかりやすいと回答した。包装前面表示等において閾値を超えた栄養成分にマークがついていたら,とても・少し意識すると回答した者は,いずれの食品群でも改善意欲あり群が多く,合計で約70%を占めたが,改善意欲なし群ではいずれも約40%であった。

    【結論】NPモデル試案に基づく包装前面表示等は,消費者の健康的な食行動の実践に影響を及ぼす可能性があり,特に食習慣の改善意欲がある者において活用可能性が高いことが示唆された。

  • 入来 寛, 寺師 美里, 三成 由美, 徳井 教孝
    原稿種別: 研究ノート
    2023 年 81 巻 5 号 p. 260-268
    発行日: 2023/10/01
    公開日: 2023/11/23
    ジャーナル フリー

    【目的】加齢に伴い,腸内細菌の有用菌は減少し,有害菌は増加することや多様性および安定性が低下することが報告されている。本研究では通所リハビリテーション施設を利用する高齢者の食生活習慣,排便状況を調査し,腸内細菌叢の属数との関連について検討した。

    【方法】対象は,福岡県O市の介護老人保健施設Hの通所リハビリテーション施設に通う高齢者のうち,調査内容を説明して同意が得られた80名の中から,便検体を提出して細菌が検出された33名である。調査内容は,対象者の属性,食習慣,排便状況,腸内細菌叢である。腸内細菌叢の分析は次世代シーケンサーを用いたアンプリコンシーケンス解析で行った。また,腸内細菌の属数は各対象者に検出された腸内細菌をカウントし,中央値で属数の少ない群,属数の多い群の2群に分けて属性や食生活習慣,排便状況との比較を行った。

    【結果】対象者の腸内細菌の属数の中央値は58であった。腸内細菌の属数と要介護度において,属数の多い群は少ない群と比較して,要支援者の割合が66.7%と有意に高い数値を示した。食生活習慣においては,属数の多い群は少ない群と比較して,朝食タイプの和食タイプが93.3%と有意に高く,また海藻類を1日1回以上食べる者が73.3%と有意に高い数値を示した。

    【結論】通所リハビリテーション施設に通う高齢者の腸内細菌の構成は要介護度,朝食タイプ,海藻類の摂取頻度と関連していることが示唆された。

資料
  • 髙野 真梨子, 武見 ゆかり, 林 芙美
    原稿種別: 資料
    2023 年 81 巻 5 号 p. 269-278
    発行日: 2023/10/01
    公開日: 2023/11/23
    ジャーナル フリー
    電子付録

    【目的】新型コロナウイルス感染拡大下 (以下,コロナ禍) の食料支出の変化には,世帯人数・世帯収入による違いがあるかを検討する。

    【方法】2018~2021年の総務省統計局『家計調査』の世帯の年間収入区分別年次データ (単身,二人以上世帯) を用いた。年間収入200万円未満及び600万円以上のデータを抽出し,属性,消費支出,食料支出とその内訳等を算出した。食料支出は,内食支出 (穀類や肉類などの食材料),嗜好的支出 (菓子類,飲料類,酒類),調理食品支出,外食支出に分類した。2018,2019年の平均値をコロナ禍以前とし,2020,2021年の変化を世帯人数×世帯収入の4つの世帯区分で比較した。

    【結果】コロナ禍が始まった2020年には,4世帯区分全てで外食支出が減少,特に単身600万円以上世帯で減少が大きかった。コロナ禍以前と比べ2020年に内食支出は増加したが,2021年には内食支出は4世帯区分全てで2020年より減少した。調理食品支出は,二人以上600万円以上世帯及び単身200万円未満世帯で2020,2021年とも増加した。

    【結論】世帯区分に関わらず,コロナ禍以前に比べ,2020年には外食の利用が減り家庭での食事が増えた傾向がうかがえた。内食支出の増加は2021年まで維持されず,調理食品の利用など食事を簡便化する動向も確認された。この変化には,世帯人数や世帯収入により異なる特徴がみられた。

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