1972 年 30 巻 1 号 p. 12-15
1. シロネズミの実験で, 20%グルテン飼料に0.5%リジンを補足すると, 血漿遊離スレオニンはいちじるしく低下するが, 赤血球, 筋肉, 肝の遊離スレオニンも同時に低下する傾向を認めた。しかし腎, 小腸ではそのような変化は明らかでなかった。
2. 14C-スレオニンからの14Cの体内分布を調べた結果, リジン補足群では対照に比べて, 小腸, 腎にスレオニンの移行が増加している傾向がみられたが, 肝では減少の傾向があった。
3. 呼気中CO2の14Cはリジン補足により影響をみなかった。
これらのことから, グルテン飼料へリジン補足による血漿スレオニン濃度の低下はスレオニン酸化促進のためでなく, 小腸, 腎などのたんぱく質合成に利用される可能性が考えられた。