栄養学雑誌
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緑茶葉抽出液の腫瘍抑制効果に関する疫学的ならびに実験的考察
小國 伊太郎那須 恵子金谷 節子太田 裕一山本 茂博野村 武男
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1989 年 47 巻 2 号 p. 93-102

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抄録

人口動態統計によると, 都道府県別にみた場合, 静岡県における癌粗死亡率は, 男女とも全国平均に比較して非常に低い。我々は, 癌予防の立場からこの事実に興味をもち, 静岡県における癌死亡の実態を, 市町村ごとに, 部位別にその標準化死亡比 (SMR) を算出, 癌死亡分布図を作成し, 詳細に検討した。その結果, 静岡県中・西部の緑茶生産地を中心とする地域に, 胃癌などの消化器癌によるSMRが, 男女とも全国値 (SMR=100) に比して顕著に低い傾向を有意に認めた。その結果に基づき, 我々は, 緑茶葉の抗腫瘍作用の有無を明らかにするために, 疫学的ならびに実験的に検討を行い, 次の結果を得た。
1) 静岡県中・西部の緑茶生産地を中心とする地域の, 全癌および胃癌などの消化器癌によるSMRは, 全国値に比して著しく低率であった。
2) 静岡県中・西部の胃癌SMRの非常に低い3K町と, SMRの高いO町の35歳以上の世帯主および主婦を対象に, 緑茶摂取状況を含む食生活調査を実施し, 性, 5歳階級別に比較検討した結果,“緑茶の飲み方”,“茶葉を取り替える頻度”,“茶の濃度”などの項目に, 男女とも有意差がみられ, 3K町 (胃癌SMRの低い地域) の住民のほうが, O町に比較して緑茶をよく摂取している傾向が認められた。
3) Sarcoma 180を移植したマウスに, 緑茶葉の熱水抽出物を経口投与すると, 顕著な腫瘍抑制作用が認められた。
これらの結果は, 緑茶の癌予防効果の可能性を示唆していると思われる。

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