栄養学雑誌
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品種や収穫場所が異なるさつまいも中のトコフェロール含有量と調理による変動について
平原 文子小池 佳子
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1989 年 47 巻 2 号 p. 85-91

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抄録

収穫時期, 産地や品種等の試料来歴が明らかな9種類のさつまいもを入手し, それらについてトコフェロール (Toc) 含量をHPLC法で分析を試みるとともに, 異なった調理方法によってToc含量がいかに変動するかについても合わせて検討することを試み, 次のような結果を得た。
1) さつまいも根塊部位別のα-Toc含量分布は, 中央部に多く, 次いで頸部, 下部の順位であった。しかし, 個体間の差が大きいため, 統計的には有意な差ではなかった。また, 根塊の大きさの違いによるToc含有量の差は認められなかった。
2) 調理法の違いにおいて, 焼き処理を行った場合の残存量は, 下部, 頸部, 中央部の順に多く, 蒸し処理では部位の違いによる差は認められなかった。
3) さつまいもの品種間のα-Tocの含量の違いについては, わずかに差がみられたが, この差は栽培場所等の条件などが大きな因子の1つとなっていることが推測された。特に, シモンでは収穫場所による違いが大きいことが明らかとなった。
4) 調理による変動率については, 加熱処理後のα-Tocの含量は, 生の根塊に換算すると, 焼き処理後では41%の残存率であった。シモンは, 比較的分解率が少ない電子レンジ処理においても, 他の品種に比較すると, 高い分解率を示した。蒸しおよび焼き処理後は, さらに残存率は低かった。
5) 調理後の水分の変化は, 電子レンジ, 蒸し, 焼き処理の順に小さかった。
6) さつまいもは一度に摂取する量が比較的多いため, 調理後のα-Toc損失を考慮しても食用油脂と同様にビタミンEの給源として重要な食品の1つであると考えられる。

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