栄養学雑誌
Online ISSN : 1883-7921
Print ISSN : 0021-5147
ISSN-L : 0021-5147
透析患者におけるヘム鉄加工食品投与の試み
廣畑 順子
著者情報
ジャーナル フリー

1994 年 52 巻 5 号 p. 237-242

詳細
抄録

透析患者の鉄欠乏性貧血の改善には, 普通, 経口鉄剤の投与, 経静脈的鉄剤の投与などの方法がとられている。しかし, 透析患者の場合は様々な問題により, これらの方法をとっても無効であったり, 鉄過剰症をひき起こす危険もある。
対象者は当院外来にて血液透析を行う患者30人である。まず, 対象者の栄養摂取状況を調べたところ, エネルギー, たん白質, 鉄の摂取量が基準値よりも不足していることが分かった。また, 血液検査の結果でも, 鉄欠乏の者が多かった。
筆者は, 現時点で最も吸収率がよいとされるヘム鉄を加工した食品 (のり佃煮, ふりかけ) を, 対象者に投与した。投与6か月後にヘム鉄加工食品の摂取状況を調べ, 食品を購入した者に対しては, 食品の嗜好性, 経済性, 簡便性についてのアンケート調査を行った。その結果, 約80%の患者が“毎日食べている”,“時々食べている”と答えた。のり佃煮を食べている患者の50%, ふりかけを食べている患者の80%が, 味については満足している。食品の値段,使いやすさについては, 90%の患者が満足している。
ヘム鉄加工食品を毎日摂取した8人について, 摂取前と摂取後の血液検査値を比較すると, ヘモグロビン濃度, ヘマトクリット値, 血清鉄に有意の差はなかったが, ヘモグロビン濃度には緩徐な改善がみられた。
ヘム鉄加工食品は, 嗜好性, 経済性, 簡便性において満足のいくものであり, 食品として適切であると思われる。

著者関連情報
© 特定非営利活動法人日本栄養改善学会
前の記事 次の記事
feedback
Top