栄養学雑誌
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下宿女子大生の生活環境と食生活型
伊海 公子坂本 裕子三好 正満
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1997 年 55 巻 5 号 p. 239-251

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抄録

(1) 下宿環境の中での食生活における問題点をみつけることと, (2) 個人レベルでの改善の可能性について調査することを目的に研究を行い, 下宿女子大生の日常生活と食生活の実態, 相互の関連の有無, 及び食生活に関する問題点を報告する。対象は, 奈良女子大学の学部生と大学院生であった。アンケート調査は, 1994年6月に, 女子大生293人を対象として実施し, 有効回収は199人であった (回収率67.9%)。回答の中から, 日常生活状況を示す16項目と, 食生活を示す14項目, 及び年齢の計31項目 (数値) で分析を行った。林の数量化理論III類 (下宿生活の50項目を使用) からの2係数も分析に加えた。結果を以下に記す。
1) 対象者には, 食生活に関して経済的に問題のある学生は認められなかった。台所器具類の所有状況は, 一般家庭とほぼ同様に整えられていた。下宿の立地条件は, 通学時間が短く, 食料品の販売店も比較的近いなど, よい環境であった。下宿満足度は7, 5±1.5点 (10点満点) と高かった。
2) 食生活状況では, 女子大生の朝食の欠食回数は, 平均1.8±2.0回/週で, この数値は, 1993年の国民栄養調査成績に比べ多い。友人との共同炊事を1か月平均2.3±4.6回行っていた。
3) 林の数量化理論III類を用いて, 女子大生を日常生活と食生活から, 以下の3つの生活型に分類した: 食料品をうまく利用する積極派 (A型), レトルトや冷凍食品を使う便宜派 (B型), 昼・夕食の外食依存派 (C型)。
4) B, C型では, 食料品の販売店との距離や購入回数などの食事作り状況の項目が, 間食や外食回数などの食生活項目と有意な関連を示した。このように, 食生活改善の鍵が個人レベルにおいて生活環境との間に存在することが示された。

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