2016 年 11 巻 1 号 p. 21-39
本稿では,高知県高知市における街路市出店者へのアンケート調査をもとに,ローカルな流通システムの展開とその空間特性を明らかにした.特に,出店者の商品調達から販売に至る行動に着目し,全国的に衰退過程にある定期市が,高知市において存続している要因について検討した.出店者の大部分は,自家生産によって農産物,花卉,青果,茶などを収穫したうえで,販売していた.しかしながら,出店者数の減少と高齢化が進行していた.夫婦2人で運営している出店者が多く,自家生産のみによる農産物の販路を,街路市以外に求める出店者の割合が高くなっている.その反面,街路市は対面販売を基本としており,出店者は街路市に対して,顧客とのコミュニケーションに楽しみや,生きがいを感じていた.ただ,今後も出店者に出店継続の意思はあるものの,後継者が確保できていないことが,多くの出店者にとっての課題となっていた.