2024 年 19 巻 1 号 p. 78-97
本稿では,保育労働者によって組織されるオンラインコミュニティに着目し,参加者の職歴や働き方を選択する際の背後にある経験を明らかにすることで,保育労働における多様な働き方の実態について検討した.調査対象者が実践する多様な働き方には,マッチング型ベビーシッター,派遣保育士,託児を個人事業主として請け負う「フリーランス保育士」などが挙げられ,これらを副業・兼業によって実践する事例が多くみられた.多様な働き方が志向される背景には,一般的な正規雇用の保育士としてのキャリアや,保育所での勤務そのものから意識的に距離を置く姿勢が見受けられる.多様な働き方は柔軟性と同時に不安定性も有しており,その実践者は保育労働者全体でみれば少数である.そうした中で,地理的な制約を受けないオンラインコミュニティは,多様な働き方を実践する者どうしの交流の場となっており,自らの経験や知識を共有するための空間として機能している.