2020 年 2 巻 3 号 p. 202-205
短腸症候群患者では吸収・合成不良による潜在的なビタミンK欠乏が報告されている.一方N-methylthiotetrazole基(以下,NMTT基と略)を持つ抗菌薬投与はビタミンK代謝を阻害する.今回これら2つの機序により血液凝固異常が出現した症例を経験した.72歳の短腸症候群患者が原因不明の腸腰筋血腫で入院し,後ほど発症した菌血症に対してNMTT基を持つセフメタゾールが投与され血液凝固異常が確認された.この血液凝固異常を契機に両者の原因がビタミンKの欠乏と判明し,ビタミンKの静脈投与と抗菌薬をNMTT基を持たないセファゾリンに変更することで改善した.短腸症候群患者では吸収・合成不良によりビタミンK欠乏を起こしやすいが,NMTT基を持つ抗菌薬の投与を契機に血液凝固異常の増悪を起こす可能性があるため,プロトロンビン時間の評価が必要である.