2020 年 2 巻 3 号 p. 220-226
【目的】透析患者に対して酢酸亜鉛製剤を投与し,血清亜鉛,銅,血球数,赤血球造血刺激因子製剤抵抗性指数(ESA-RI)に対する作用を検討した.【対象および方法】潜在性亜鉛欠乏(血清亜鉛<80 µg/dL)の維持血液透析患者81人を亜鉛製剤投与群(50 mg/日)と栄養指導群に分けた.血清銅基準値(66~130 µg/dL)に基づき,3カ月後の血清銅値が66 µg/dL未満の患者は亜鉛投与を中止し,66 µg/dL以上の患者は6カ月後まで投与を継続した.【結果】亜鉛投与3カ月後に血清亜鉛値は著明に上昇し,3割の患者が血清銅下限値未満となった.一方,栄養指導3カ月後に血清亜鉛値は僅かに上昇したが,血清銅値に変化は認められなかった.また,6カ月までの亜鉛投与により,投与前と比較して,赤血球数,白血球数,血小板数,ESA-RIに変化は認められなかった.【結論】透析患者における亜鉛投与時の,用量,投与期間,至適血清亜鉛濃度,血清銅濃度の許容下限値などの更なるデータ蓄積が求められる.