沿岸海洋研究
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物理・生態系結合モデルに基づく日本海の 溶存酸素(DO)濃度への生物学的寄与
金 海珍広瀬 直毅高山 勝巳
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2020 年 58 巻 1 号 p. 57-58

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抄録

日本海の深層では,溶存酸素(dissolved oxygen:以後DO と省略)濃度が長期的に低下し続けている.DO 濃度の減少 に関してGamo et al.(1986)1)は3つの要因:1.深層・底層水の形成量が減少あるいは停止;2.深層に沈み込む有機物の 増加;3.深層水と底層水の鉛直混合の強化,を可能性として例示している.これまでの研究では,要因1がDO 濃度の 長期的な減少をもたらす主因とみなしており,要因2と3の影響はまだ明らかにされていない.本研究では,物理・生態 系結合モデルを利用して日本海のDO 濃度減少に対する3つの要因の影響を定量的に明らかにした.要因1である深層水 の形成の停止は,DO 濃度の総減少量比で128%もの効果があり,確かにDO 濃度の長期的な減少を起こす最も重要な原 因である.深層に沈み込む有機物の長期的な増加(要因2)は,DO 濃度の減少を加速させたが,それはDO 濃度の総減 少量に対して7%程度である.一方,生物学的分解を伴わない物理活動(要因3)は,逆に総減少量の35%相当分の深層 DO 濃度を増加させる効果が認められる.

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© 2020 日本海洋学会 沿岸海洋研究会
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