抄録
小中学生がほぼ悉皆で受験する全国学力学習状況調査と同じ問題を大学生に課して、その比較を行った。国語・算数・理科の全国学力学習状況調査(平成 30 年度)の小学生と中学生の B 問題から選択して、3 教科で小中学生の問題 6 種類(問題数は 18 問)を、60 分の制限時間で、東京都内の大学生 60 名(男性 30 名、女性 30 名)に解答してもらった。 また、大学生にフェースシートに記入してもらい、正答率との相関を分析した。その結果、 以下のような知見を得た。①大学生は、小中学生に比べて国語・算数・理科のすべての問題について正答率が高い。②特に大学生は、小中学生に比べて、文章の構造や文章理解において、優れている。③それは、文系や理系の専攻との関連はない。④しかし大学生は、 小中学生と比較して、論理的に推論したり証明したり現実や自然の現象を説明したり推論することの差は、あまり大きくない。つまり、大学生の理科や数学の論理的思考力は、国語の読解力に比べて、弱い。これらの結果は、小規模の事例なので一般的な知見ではないが、ある示唆を与えると思われる。