2022 年 16 巻 2 号 p. 66-75
情報理論に基づいた秘密情報の符号化システムとして,シャノン暗号システム,秘密分散通信システム,秘密分散法,安全なネットワーク符号化,盗聴通信路符号化を取り扱う.情報理論におけるセキュリティ符号化問題では,秘密情報の完全秘匿を達成することを目的としている場合が多いが,本稿では,完全秘匿ではなく不完全秘匿を用いた情報理論的に安全な符号化法を紹介する.これは,秘密情報を幾つかの部分情報に分割し,各部分情報に関して個別に完全秘匿を達成することで情報の安全性を保証し,他方,秘密情報全体としては不完全秘匿とすることで,符号化に必要な乱数のビット長や符号語のビット長を減らすことができる符号化法である.その結果,情報理論的に安全で効率のよい符号化が可能となる.