2023 年 17 巻 1 号 p. 52-58
2010年に提案された誤り訂正符号であるスパース重ね合わせ符号は,辞書と呼ばれる行列の列ベクトルのスパースな重ね合わせにより符号語を構成する.この符号はガウス通信路 (AWGN channel) に直接適用され,通信路容量に任意に近い伝送レートを達成することが証明されている.またこの符号の理論的限界として,計算量を無視した最適な復号(最ゆう復号)を行った場合の復号誤り確率が解析されている.一方,効率的復号については,圧縮センシングの解法の一つであるApproximate Message Passing (AMP) の適用など,実用化に向けた工夫が検討されてきた.本稿ではこれらの話題について,筆者らの研究成果である,辞書の生成分布を大幅に簡略化した場合の最ゆう復号の性能評価も交えて紹介する.