2023 年 17 巻 2 号 p. 126-135
持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向け,今後の高速無線通信システムにおいても,周波数効率と電力効率の双方の観点から優れたディジタル伝送方式の創出が求められる.一般に周波数効率の高いディジタル変調信号は,その瞬時電力が大きく変動する.しかし高いピーク電力をもつ信号を線形増幅する場合,増幅器の電力効率は著しく劣化する.よってこれらの間にはトレードオフの関係が存在する.本稿では,現在広く使用されている周波数効率の高いディジタル変調信号を対象に,その瞬時電力の解析手法について取り上げる.特に高次モーメントをその指標とすることで,瞬時電力変動が簡易に評価できることを示す.更にダウンリンク非直交マルチアクセス(NOMA)のように複数の変調信号が重畳される場合について,それらがガウス分布に近づく様子についても高次モーメントの観点から解析する.