抄録
日本産の新しい実験動物ジャコウネズミすなわちスンクス (Suncus murinus) 雄の性成熟過程を知るために, 出生後の日齢の進行に伴う精巣, 副生殖腺, 生殖腺以外の各種臓器重量の変化, 精子形成, Testosterone生合成系に関与する酵素の1つ△5-3β-Hydroxysteroid dehydrogenase (HSD) 活性の精巣における出現時期, さらに血漿中Testosterone (T) 濃度について調べた。精巣の重量増加は, 10日齢から顕著になった。15日齢にLeydig細胞部位に, HSD活性が弱いながら検出された。血漿中T濃度は, この酵素活性の強まりに呼応して, 15日齢を過ぎると急激に増加し, 30日齢にPeakに達した。精嚢, 前立腺重量は, S字型曲線を描いて増加し, 25日齢頃から急増期に入った。精子は, 28日齢に精細管に出現し始め, 33日齢にはほとんどの精細管中に精子が観察された。これらからスンクスの雄において, 性腺活動開始期は, 25日齢頃と考えられた。また40日齢には, 精巣, 副生殖腺, 体重の増加が鈍化傾向を示した。この事はこの日齢で身体発育がほぼ完了したことを示唆する。そして40日齢で雌と交尾し, 妊娠させた。おそらく, 35~40日齢頃には, 器官重量増加度あるいは血漿中T濃度からも, 既に交尾・射精可能な状態一性成熟に達していると考えられた。