抄録
ポリ酢酸ビニルラテックスのナイロン-6, ポリアクリロニトリル及び木綿繊維への付着量を時間及びpHに関して測定し, ポリスチレン及びポリアクリル酸エチルラテックスの結果と比較した。結果を静電力及びファンデルワールス力による相互作用の点から考察した。
ナイロン6-繊維への付着量は, pHの増加と共に急激に減少し, 静電的な相互作用が付着に対する主たる因子であることがわかった。
ポリスチレン及びポリアクリル酸エチルラテックスのポリアクリロニトリル及び木綿繊維への付着量は, 大きな静電的反発力にもかかわらず大きな値を示し, pHの増加すなわち静電的反発力の増加に対してもその減少はわずかであった。一方, これらの繊維に対するポリ酢酸ビニルラテックスの付着量は, ポリスチレンやポリアクリル酸エチルラテックスとほとんど同程度の反発力にもかかわらず, 非常に小さい値を示した。
これらの結果に基づき, ポリ酢酸ビニルラテックスとポリアクリロニトリル繊維や木綿繊維の間には, ラテックス粒子表面に存在するかも知れない水溶性高分子層, 例えばポリビニルアルコール層による立体的な反発力が働くことを考えた。