抄録
本研究では, 近交系マウスの同定と系統間の遺伝的類縁関係の分析に対するDNAフィンガープリント法の有用性を検討したポプロープにはM13ファージDNAの反復配列を使用した。マウスの系統として, 8系統の近交系 (NC/Jah, DDD/Jah, DSD/Jah, RR/Jah, SS/Jah, C3H/HeJah, C57BL/6Jah, C57BL/6CrSic) とcoisogenicのNC-brp, congenicのC57BL/6-bgの2系統を用いた。系統内でのDNAフィンガープリントは, どの系統も全く同一のバンディングパターンを示した。また, 系統内における突然変異のバンドは観察されなかった。10系統は, それぞれ系統に特有のバンディングパターンを示した。これらの結果は, M13ファージプロープを用いたDNAフィンガープリント法は, 近交系マウスの遺伝的モニタリングに適していることを示す。系統間の遺伝的類縁関係を見るために各系統のバンディングパターンでデンドログラムを作成したところ, C57BLグループとその他のグループに大別された。遺伝的類縁関係が近いものとして, (C57BL/6Jah, C57BL/6CrSlc, C57BL/6-bg) , (NC/Jah, NC-brp, RR/Jah) , (DDD/Jah, DSD/Jah) の組み合わせが見られた。これは, それぞれ系統の歴史的背景と一致していた。これらより, 本法はマウス近交系間の遺伝的類縁関係を解明するための方法としても適していることが明らかにされたポ