福岡県農林業総合試験場研究報告
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黒毛和種繁殖雌牛における栄養水準の増減が過剰排卵処置時の卵胞数および採胚成績に及ぼす影響
林 武司 上田 修二磯崎 良寛
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2024 年 10 巻 p. 25-31

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抄録
本研究は,体内胚を採取するために過剰排卵処置を施す黒毛和種雌牛に対し,配合飼料の給与量を変更することで栄養状態の切替え(配合飼料減量→増量)を行い,小中卵胞数,過剰排卵処置の反応性や採胚成績に及ぼす影響について検討を行った。試験は黒毛和種雌牛9頭を用い,試験区は,配合飼料を減量給与(TDN:90%,CP:100%)で2週間維持し,増量給与(TDN:115%,CP:140%)に切り替えたのち,1週間後にCIDRを挿入し過剰排卵処置および採胚を実施した。対照区は基準量(TDN:106%,CP:110%)を試験区と同等の期間給与した。試験期間中の体重変動は,試験区,対照区との間に差はなかった。試験期間中の小中卵胞数について,試験区では,減量給与中,大きな変動はなかったが,増量給与に切り替わると小中卵胞数は増量給与前と比べて増加した(P<0.05)。しかしながら,その後実施した過剰排卵処置時の大卵胞数は,両区で差は認められなかった。採胚成績では総回収卵数は両区で差は認められなかったが,試験区では対照区と比べ,正常受精胚数が有意に多くなり(P<0.05),ABランク胚数は多い傾向がみられた(P=0.069)。また,未受精卵数は試験区が有意に少なくなった(P<0.05)。これらの結果から,過剰排卵処置前の黒毛和種雌牛において,配合飼料の給与量を減量から増量し,栄養水準を切り上げると小中卵胞数が増加するものの,過剰排卵処置後の大卵胞発育への反応性には影響しないと考えられた。一方で正常受精卵数が向上し,未受精卵数が減少する等,採胚成績を向上させる可能性があることが示唆された。
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