抄録
ブドウ台木の採穂母樹の軽労型栽培技術の確立を目的に,垣根仕立て栽培が台木品種の樹体生育と作業姿勢の改善に及ぼす影響を調査した。垣根仕立て(以下,垣根区)の「テレキ5BB」の主幹長は55cmであり,主幹径と主枝長に棚仕立て(以下,慣行区)との差はみられなかった。新梢管理について,仕立て方の違いによる作業時間の差はみられなかった。作業姿勢については,腕を肩より上げる姿勢(以下,腕上げ姿勢)と前屈姿勢を不良姿勢として,不良姿勢での作業時間(以下,不良姿勢時間)を調査した。新梢管理では,垣根区の前屈姿勢の作業時間は慣行区より6分6秒長く,腕上げ姿勢の作業時間は慣行区より60分33秒短かった。また,垣根区の不良姿勢時間は13分29秒であり,慣行区の67分56秒より有意に短かった。せん定について,仕立て方の違いによる作業時間と不良姿勢時間の差はみられなかった。また,仕立て方の違いによる1樹当たりの採穂数と穂木径の差はみられなかったが,垣根区の単位面積当たりの採穂数は72.5本であり,慣行区の7.3本より多かった。「イブリッド・フラン」における樹体生育や新梢管理の作業時間および不良姿勢時間等についても同様の傾向がみられた。以上より,台木品種を垣根仕立てで栽培することで,新梢管理において作業姿勢の改善による軽労化が図られた。さらに単位面積当たりの採穂数が増加することから,台木の供給量の増加に寄与できる。