抄録
炎症性腸疾患(IBD)は,消化管の慢性的な炎症を主徴とする原因不明の疾患であり,最近話題になることが多い潰瘍性大腸炎やクローン病はその代表例である.1970年代以降その患者数は急増しており,2009年度における患者数は約15万人と報告されている.IBDの主な症状は下痢,腹痛,血便であり,緩解・再燃を繰り返す.現在においてもIBDの完治は困難であり,病態機構の解明および創薬標的の探索が精力的に行われている.今回,IBDモデルマウスにおいて,transient receptor potential melastatin 8(TRPM8)の活性化が大腸炎を抑制することが報告されたので,以下に紹介したい.