抄録
ヒトの体に常在する微生物集団(マイクロバイオータ)は、代謝や免疫機能など、我々の健康や疾患に多大な影響を及ぼしている。特に腸内細菌叢に関しては、近年の解析技術の進歩によって、組成や代謝産物を含めた全容をより詳細に知ることができるようになった。その結果、腸内細菌叢がこれまで考えられていた以上に我々の生理機能と密接に関連していることが明らかになってきた。さらに、この共生体である腸内細菌叢を創薬ターゲットとする動きが活発になり、欧米では多くの製薬会社やバイオベンチャーが開発に乗りだしている。そこで本稿では腸内細菌叢の機能と創薬の可能性について最新の知見と筆者の考えを交えながら解説する。