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アルギナーゼ1による炎症増悪とそのメカニズム
安田 好文
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2017 年 53 巻 4 号 p. 362

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抄録

寄生虫や花粉などに曝露されると,T細胞はTh2細胞に分化して抗原特異的にIL-5,IL-13などのTh2サイトカインを産生し,好酸球集積,杯細胞過形成,気道抵抗上昇を惹起して外来抗原を排除する.しかしその反応が過剰になると,喘息やアトピー性皮膚炎などの2型炎症の原因となる.また一方で,IL-13はマクロファージ(Mφ)を免疫抑制性のMφに分化させ.抗炎症性のIL-10やTGFβの産生を介して免疫抑制や組織修復を誘導する.このMφはさらにアルギナーゼ1(Arg1)を発現し.アルギニンの枯渇や一酸化窒素の産生抑制によっても抗炎症作用を示す.Arg1は尿素代謝に必須の酵素であり主に肝臓に発現するが,このように免疫系でも重要な役割を持つ. また上皮細胞の傷害によりIL-33などが産生されると,グループ2自然リンパ球(group 2 innate lymphoid cells:ILC2)は抗原非特異的にTh2サイトカインを大量に産生する.その特徴から.ILC2はTh2細胞とは別の2型炎症の鍵となる細胞として注目されている. 最近,ILC2がArg1を発現することが報告されたが,その意義は不明であった.本稿では,ILC2に発現するArg1の役割を明らかにしたMonticelliらの論文を紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Munder M., Br. J. Pharmacol., 158, 638-651(2009).
2) Waker J. et al., Nat. Rev. Immunol., 13, 75-87(2013).
3) Monticelli L. A. et al., Nat. Immunol., 17, 656-665(2016).

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© 2017 The Pharmaceutical Society of Japan
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