ファルマシア
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53 巻, 4 号
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目次
  • 2017 年 53 巻 4 号 p. 288-289
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/04/01
    ジャーナル フリー
    ミニ特集:医療現場で活かせる基礎科学
    表紙の説明:古代ギリシャのヒポクラテスは,日本でも神農と並び崇められた医薬の聖人である.この絵の賛を書いたのは,我が国最初の薬学博士で,日本薬学会副会頭,日本薬剤師会長を務めた丹波敬三.1926年の作.「眼睛如電,鬚髯如神.面貌可畏,其心極仁.不為良相,為良医人.功徳洪大,千載不偏.大正十五年一月,正三位勲一等薬学博士丹波敬三」とある.絵は丹波緑川の筆.緑川は敬三の息子で,もと薬剤官であったが,のち日本画家に転じて名を成した.[武田科学振興財団杏雨書屋所蔵]
    ミニ特集にあたって:薬剤師養成を目的とする6年制薬学教育においても,物理,化学,生物といった基礎科目は重要であり,薬剤師国家試験でもこれらの問題が出題される.しかし,大学教員の多くは医療現場の経験がなく,薬剤師業務において基礎科学が必要となる場面を想像するのは容易でない.本ミニ特集では,医療現場で基礎科学がどのように活かされるかという視点で,講義にも使える種々の実例の紹介に加え,薬学部での基礎科学教育について,医学部やアメリカの事例と比較し課題や展望について述べていただいた.本誌では,医療現場と基礎科学の懸け橋となることを期待して,さらに多くの具体例をご紹介するシリーズを本年後半から開始する予定である.乞うご期待!
オピニオン
  • 奥 直人
    2017 年 53 巻 4 号 p. 287
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/04/01
    ジャーナル フリー
    日本薬学会は、学会員が薬学という共通基盤を認識し、支えてきた学術団体である.本学会では学術誌三誌およびファルマシアを刊行している.ニーズに合った情報を発信し、学術誌等の充実・発展を目指す.また学会の国際化をさらに推進したいと考えている.本学会には10部会と9支部がある.部会・支部および年会での優秀発表賞等は,若手研究者のインセンティブを高めると考えている.会員には、部会に属しやすい環境を整備し、部会・支部の活性化を図りたい.
Editor's Eye
ミニ特集 話題
ミニ特集 話題
ミニ特集 話題
  • 石川 和宏
    2017 年 53 巻 4 号 p. 305-308
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/04/01
    ジャーナル フリー
    近年、医療は高度化・複雑化を増すばかりである。このような医療の現状において、臨床薬剤師は、臨床現場に欠かせない知識・技能・態度を十分に統合した実践能力を患者個々の状況に応じて適切に発揮することが求められている。そこで、薬学基礎と専門教育である臨床関連教育が常に深いつながりをもたせることで、薬学基礎分野の内容が薬剤師の臨床実践能力に非常に役に立つことを意識させるよう教授するとともに、習得された基礎知識を統合して知識・技能・態度との連動をスムーズにさせることで今後実践能力の育成がよりスムーズに図れるようになることを期待している。
ミニ特集 話題
  • 梅澤 勲
    2017 年 53 巻 4 号 p. 309-312
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/04/01
    ジャーナル フリー
    ある薬効を示す一群の医薬品は,作用機序・副作用とも類似している場合が多い.しかし,その枠を超えて存在する作用・副作用を導くことは困難である.それらが構造式により推定できるとすれば,効率的な手段となり得る.特定の原子団や部分構造を構成する官能基対は,医薬品の薬理活性と密接に関係する場合が多い. 官能基対とは1〜3個の炭素原子を隔てて存在する2つの原子団を示す.この官能基対と薬理作用および副作用との関連性について,例をあげて紹介したい.
    官能基対には,薬理作用発現に深く関与するものと,生体との親和性を示すものが存在する.どちらも重要であるが,前者の例として,官能基対の片方を第1級・2級・3級アミン,および第4級アンモニウムにしたときの薬理活性と副作用について考察する.
ミニ特集 話題
ミニ特集 話題
ミニ特集 話題
ミニ特集 話題
最前線
話題
セミナー
  • 日本癌治療学会編
    今村 知世
    2017 年 53 巻 4 号 p. 338-342
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/04/01
    ジャーナル フリー
    日本癌治療学会編「制吐薬適正使用ガイドライン」は,我が国の保険診療制度と国際的エビデンスに基づき,悪心・嘔吐の制御について医療従事者向けに提示することを目的に作成され,2010年5月に初版が発行された.その後,NK1受容体拮抗薬ホスアプレピタント(プロイメンド®点滴静注用)の発売等に対応するために部分的な改訂が行われ,日本癌治療学会ホームページに1.2版として公開されていたが,クリニカルクエスチョン(clinical question:CQ)の見直しも含めた全面的な改訂により,2015年10月に第2版が書籍版として発行された.
    そこで本稿では,制吐薬の適正使用に関する薬学的事項を中心にガイドラインを紹介する.
FYI(用語解説)
  • 伊藤 拓水, 半田 宏
    2017 年 53 巻 4 号 p. 343_1
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/04/01
    ジャーナル フリー
    骨髄中に位置する形質細胞のがん.形質細胞とは,白血球の一種であるB細胞が成熟し,抗体産生能を獲得した最終分化細胞のことを指す.全身の骨髄に腫瘍が“多発”することから多発性骨髄腫と呼ばれる.主に中高年が罹患し,我が国では2万人近い患者が存在する.長い間有効な治療法の乏しい難病であったが,最近になり複数の優れた治療薬が開発されるようになった.特にタンパク質分解系におけるプロテアソーム阻害剤(ボルテゾミブやカルフィルゾミブなど)や,E3ユビキチンリガーゼであるセレブロンを分子標的とする免疫調節薬(レナリドミドやポマリドミドなど)が登場したことにより,本疾患の予後は急速に改善されている.
  • 今村 知世
    2017 年 53 巻 4 号 p. 343_2
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/04/01
    ジャーナル フリー
    ニューロキニン1(neurokinin 1:NK1)受容体は,タキキニンペプチドの1つであるサブスタンスPと高い親和性を有するGタンパク質共役型受容体である.中枢のみならず末梢にも存在し,サブスタンスPとの結合により様々な情報伝達系を活性化し,複数のイオンチャネルを修飾して疼痛,神経原性炎症,情動等の広範囲な生理機能と疾患病態に関与している.がん薬物療法に伴う悪心・嘔吐(chemotherapy induced nausea and vomiting:CINV)の中でも抗がん薬投与後24時間以降に発現する遅発性嘔吐は,孤束核や腸管の迷走神経終末にあるNK1受容体へのサブスタンスPの結合により発現することから,NK1受容体拮抗薬にて,制吐効果が得られる.現在,我が国で承認されているNK1受容体拮抗薬には,アプレピタントとそのリン酸化プロドラッグのホスアプレピタントがある.
  • 田中 聡
    2017 年 53 巻 4 号 p. 343_3
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/04/01
    ジャーナル フリー
    歯や骨といった組織の主成分である水酸化リン酸カルシウムのことであり,化学式はCa10(PO4)6(OH)2で示される.骨の60%,歯のエナメル質の97%がハイドロキシアパタイトで構成されている.特徴としては,生体親和性,特に骨への親和性が高く,人工骨等のバイオマテリアル(生体材料)として利用される.このようにして作成した人工骨を,骨の欠損した箇所に埋めることで,その表面を新生骨が覆い,骨の吸収と形成を繰り返し長い時間をかけて自家骨に置換されていく.医学・歯学分野では,主にヒトの生体に移植することを目的とした人工関節,人工骨,デンタルインプラント等で活用されている.また,タンパク質とも高い吸着性を示すことが知られており,生体分子等の分離で利用されるクロマトグラフィーの充填剤としても利用されている.
  • 土肥 雅彦
    2017 年 53 巻 4 号 p. 343_4
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/04/01
    ジャーナル フリー
    顆粒の製造法の一つとして,核となる粒子を中心に種々の機能を持った異なる層を積層する方法がある.中心の粒を核顆粒と言い,通常,粒状の乳糖やセルロースなどが用いられる.例として,ムコソルバンL錠で用いている小型化顆粒の場合,①核顆粒を中心に,②主薬の入った主薬層,③その主薬を徐々に放出させるための放出制御膜,④打錠時の圧縮に対して顆粒の形を維持するための緩衝膜,⑤錠剤化しやすくするための添加剤を被膜した圧縮成形層の順に積層させることにより製造されている.
承認薬の一覧
  • 新薬紹介委員会
    2017 年 53 巻 4 号 p. 345
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/04/01
    ジャーナル フリー
    本稿では厚生労働省が新たに承認した新有効成分含有など新規性の高い医薬品について,資料として掲載します.表1は,当該医薬品について販売名,申請会社名,薬効分類を一覧としました.
    本稿は,厚生労働省医薬安全局審査管理課より各都道府県薬務主管課あてに通知される“新医薬品として承認された医薬品について”等を基に作成しています.今回は,平成28年12月19日付分の情報より引用掲載しています.また,次号以降の「承認薬インフォメーション」欄で一般名,有効成分または本質および化学構造,効能・効果などを表示するとともに,「新薬のプロフィル」欄において詳しく解説しますので,そちらも併せて参照して下さい.
    なお,当該医薬品に関する詳細な情報は,医薬品医療機器総合機構のホームページ→「医療用医薬品」→「医療用医薬品 情報検索」(http://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuSearch/)より検索できます.
新薬のプロフィル
  • 田中 聡
    2017 年 53 巻 4 号 p. 346-347
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/04/01
    ジャーナル フリー
    ゾレドロン酸水和物(リクラスト:本剤)は破骨細胞の形成阻害、機能喪失及びアポトーシスを引き起こすことで骨吸収作用を抑制する。ビスホスホネート製剤は、服薬率向上と治療継続、患者の通院負担軽減を目的として、投与間隔を広げる開発が行われ、また、経口ビスホスホネート製剤の副作用を回避する目的で注射製剤の開発も進められてきた。本剤は1年に1回の点滴静注により、強力な骨吸収抑制作用を発揮することで、骨密度の減少と骨微細構造の劣化の双方を抑制し、骨折を抑制することが期待される。
新薬のプロフィル
  • 舟木 俊治
    2017 年 53 巻 4 号 p. 348-349
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/04/01
    ジャーナル フリー
    本剤は,非プロスタノイド構造の選択的プロスタサイクリン受容体(IP受容体)作動薬である.国内ではすでにプロスタサイクリン(PGI2)およびその誘導体が,肺動脈性肺高血圧症(PAH)の治療に臨床応用されている.しかし,これらの多くは半減期が短く,血中濃度の維持が課題であった.そこで,長時間持続型のIP受容体作動薬を探索し,経口投与後に活性代謝物(MRE-269)の有効血中濃度が長時間維持できるセレキシパグを創製した.主にMRE-269がIP受容体に作用し, 血管拡張作用および細胞増殖抑制作用を示す.
在宅医療推進における薬剤師のかかわり
製剤化のサイエンス
留学体験記 世界の薬学現場から
トピックス
  • 末木 俊輔
    2017 年 53 巻 4 号 p. 358
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/04/01
    ジャーナル フリー
    アゼチジンは窒素原子を含む飽和四員環複素環式化合物であり,医薬品や天然物などの部分骨格中に認められる.しかし,一般にアゼチジンはその大きなひずみのために合成が困難であり,これまでに効率的な合成法が少なかった.今回Chenらは,Pd触媒による分子内C–Hアミノ化反応を利用したベンズアゼチジン類合成法の開発に成功したので,紹介したい.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) He G. et al.,Nature Chem., 8, 1131-1136(2016).
    2) He G. et al., J. Am. Chem. Soc., 134, 3–6 (2012).
    3) Gary J. B., Sanford M. S. Organometallics30, 6143–6149(2011).
    4) Nielsen M. C. et al., J. Am. Chem. Soc., 135, 1978–1985(2013).
  • 吉田 優
    2017 年 53 巻 4 号 p. 359
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/04/01
    ジャーナル フリー
    ライフサイエンス研究において,タンパク質に対して蛍光の機能を付与したい場合に,観測対象の生体分子本来の機能を保持したまま蛍光団などを導入できる手法として,「クリックケミストリー」が利用されるようになってきた.なかでも,アジドと末端アルキンとの銅触媒を用いるヒュスゲン反応や,無触媒で進行するアジドと環状アルキンとの反応が広範な場面で用いられている.しかし,生体内での局在を可視化したい分子に対する18F(t1/2約110分)のような半減期の短い放射性同位体での標識の需要等を背景に,より高速で進行するクリック反応が今なお求められている.Kolodychらは,イムノアッセイを利用したハイスループットスクリーニング手法による反応開発を提案し,新たな官能基の組み合わせである,シドノン類と末端アルキンとのクリック反応の発見に成功した.また,本反応がタンパク質の蛍光標識に有用であることを見いだしている(図1-1)). さらに最近,同グループは,4-フルオロシドノンが末端および環状アルキンと効率よく反応し,特に後者との反応がきわめて速やかに進行することを報告したので,本稿で紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Kolodych S. et al., Angew. Chem., Int. Ed., 52, 12056–12060(2013).
    2) Liu H. et al., Angew. Chem., Int. Ed., 55, 12073–12077(2016).
    3) Dommerholt J. et al., Angew. Chem., Int. Ed., 49, 9422–9425(2016).
  • 吉冨 太一
    2017 年 53 巻 4 号 p. 360
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/04/01
    ジャーナル フリー
    近年,遺伝子やタンパク質などを網羅的に解析し,有用情報を導き出す「オミクス」が注目を集めている.なかでも代謝成分に着目したメタボローム解析は,分析機器やコンピュータの飛躍的な発展に伴い,比較的容易に利用可能となってきた. この解析は,遺伝子やタンパク質などの高分子化合物を除く,低分子化合物から中程度の分子量の化合物にその主眼を置く.そのため,生物の代謝物を解析するだけでなく,食品や生薬のプロファイリングによる品質評価や薬物投与後の影響の解析など創薬研究への応用も進んでいる.こうした一連の流れは,今回紹介する天然物化学の分野でも取り入れられ,強力な探索ツールになろうとしている.その一例として,Olsenらによって報告された海洋天然物からの新規化合物発見に関する話題を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Olsen E. K. et al., J. Nat. Prod., 79, 1285-1291(2016).
    2) Hedner E. et al., J. Nat. Prod., 71, 330-333(2008).
  • 若本 拓朗
    2017 年 53 巻 4 号 p. 361
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/04/01
    ジャーナル フリー
    アルツハイマー病は,アミロイドβ(Aβ)と呼ばれるペプチドが脳内で異常沈着する病態を示す.Aβは,異常凝集によりアミロイド線維を形成し神経細胞毒性を示すと考えられている.Aβは前駆体タンパク質であるAmyloid-βprecursor proteinの部分断片であり,γ-セレクターゼによる切断部位の多様性により,主に40残基(Aβ40)と42残基(Aβ42)の分子種が存在する.Aβ42は,Aβ40と比べて凝集形成速度が速いことや神経細胞毒性が高いことから,Aβ42がどのような立体構造をとることでアミロイド線維の形成に関わるか注目されている.立体構造決定の一般的な手法として,X線結晶構造解析や溶液核磁気共鳴(NMR)法があるが,Aβは結晶化困難かつ難容性のため,それらの手法での構造研究は難しい.しかし近年,固体NMR法を利用したAβの立体構造研究の発展により,2015年,XiaoらによってAβ42のアミロイド線維の立体構造が主鎖二乗平均偏差 1.08Åの精度で決定された. 立体構造の特徴として,Z字型のcross-β-sheetをとっており単量体のAβが層になっている.
    今回,Wältiらは固体NMR法を用いて,より高分解能なAβ42のアミロイド線維の立体構造を明らかにしたので紹介する(主鎖二乗平均偏差 0.89Å).
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Xiao Y. et al., Nature Struct. Mol. Biol., 22, 499-505(2015).
    2) Wälti M. A. et al., Proc. Natl. Acad. Sci., 113, 4976-4984(2016).
  • 安田 好文
    2017 年 53 巻 4 号 p. 362
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/04/01
    ジャーナル フリー
    寄生虫や花粉などに曝露されると,T細胞はTh2細胞に分化して抗原特異的にIL-5,IL-13などのTh2サイトカインを産生し,好酸球集積,杯細胞過形成,気道抵抗上昇を惹起して外来抗原を排除する.しかしその反応が過剰になると,喘息やアトピー性皮膚炎などの2型炎症の原因となる.また一方で,IL-13はマクロファージ(Mφ)を免疫抑制性のMφに分化させ.抗炎症性のIL-10やTGFβの産生を介して免疫抑制や組織修復を誘導する.このMφはさらにアルギナーゼ1(Arg1)を発現し.アルギニンの枯渇や一酸化窒素の産生抑制によっても抗炎症作用を示す.Arg1は尿素代謝に必須の酵素であり主に肝臓に発現するが,このように免疫系でも重要な役割を持つ. また上皮細胞の傷害によりIL-33などが産生されると,グループ2自然リンパ球(group 2 innate lymphoid cells:ILC2)は抗原非特異的にTh2サイトカインを大量に産生する.その特徴から.ILC2はTh2細胞とは別の2型炎症の鍵となる細胞として注目されている. 最近,ILC2がArg1を発現することが報告されたが,その意義は不明であった.本稿では,ILC2に発現するArg1の役割を明らかにしたMonticelliらの論文を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Munder M., Br. J. Pharmacol., 158, 638-651(2009).
    2) Waker J. et al., Nat. Rev. Immunol., 13, 75-87(2013).
    3) Monticelli L. A. et al., Nat. Immunol., 17, 656-665(2016).
  • 堀田 祐志
    2017 年 53 巻 4 号 p. 363
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/04/01
    ジャーナル フリー
    妊娠20週以降に高血圧,蛋白尿を呈する妊娠高血圧腎症は,胎盤の血流量の低下に伴い胎児の発育不全を生じさせる場合がある.これまでにGantらは,妊娠時には通常アンジオテンシンⅡ(AngⅡ)による血圧上昇が抑制されるが,妊娠高血圧腎症を発症した女性では,このAngⅡによる血圧上昇が抑制されないことを報告している. 血管内皮増殖因子(VEGF)受容体1の変異体である可溶性fms様チロシンキナーゼ1(sFLT-1)は,組織中や血中でVEGFや胎盤増殖因子に結合して抗血管新生作用を発揮する.妊娠高血圧腎症患者において,sFLT-1レベルが上昇するという報告もあるが,sFLT-1レベルがAngⅡによる血圧上昇作用におよぼす影響は不明である.本稿では,この妊娠高血圧腎症におけるAngⅡの血圧上昇に対するsFLT-1の役割を明らかにしたBurkeらの研究を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Gant N. F. et al., J. Clin. Invest., 52, 2682-2689(1973).
    2) Burke S. D. et al., J. Clin. Invest., 126, 2561-2574(2016).
    3) Seligman S. P. et al., Am. J. Obset. Gynecol., 171, 944-948(1994).
    4) Sandrim V. C. et al., Hypertension., 52, 402-407(2008).
    5) Rafikov R. et al., J. Endocrinol., 210, 271-284(2011).
  • 石原 康宏
    2017 年 53 巻 4 号 p. 364
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/04/01
    ジャーナル フリー
    脳内の免疫担当細胞であるミクログリアは,例えば細菌感染により活性化し,炎症反応や貪食反応を介して細菌を除去し,ニューロンを保護する.一方,神経変性疾患で活性化ミクログリアの集積が認められることから,過剰に活性化したミクログリアはニューロンを障害すると考えられている.ミクログリアの核酸や糖脂質など高分子に対する応答機序は比較的よく知られているが,化学物質のような低分子に対するミクログリアの応答には議論がある.本稿では,三酸化二ヒ素によるミクログリア活性化と神経障害に関するMaoらの論文を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Mao J. et al., Toxicol. Appl. Pharmacol., 303, 79-89(2016).
    2) McCann M. J. et al., Neuroscience, 72, 273–281(1996).
    3) Shinozaki Y. et al., Sci. Rep., 4, 4329(2014).
  • 照喜名 孝之
    2017 年 53 巻 4 号 p. 365
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/04/01
    ジャーナル フリー
    3Dプリンター技術の進歩は目覚ましく,様々な業界で利用されている.そして遂に2015年8月に,米国FDAが世界で初めて,3Dプリンター技術を用いて製造されたてんかん治療薬(口腔内崩壊錠)を承認した.この錠剤は,1980年代にマサチューセッツ工科大学で開発されたpowder-liquid 3Dプリント技術を応用して製造されている. この3Dプリンター技術は,特殊な液体を使って粉末に粘着性を持たせ,これを層形成していく技術である.この技術を用いた製剤開発が確立・一般化されれば,各患者のニーズに対応して,投与量を簡単に調整できるようになるため,3Dプリンター技術への期待は大きい.しかし,現状では製造するためのプリンターは高額であり,この3Dプリンター方式による医薬品製造の一般化にはほど遠い.現在,比較的実現可能な製剤開発で利用できる3Dプリンター技術としては,特許切れとなり,低価格帯となった熱溶解積層(fused deposition modeling:FDM)方式と,光造形(stereolithography:SLA)方式がある.FDM方式では,造形材料であるプラスチック様フィラメントを熱で溶融して,ノズルから押し出し,積み上げて造形する.一方,SLA方式では,液体状の光硬化性樹脂を紫外線レーザーで一層ずつ硬化させて積層し,造形する.本稿では,FDM方式とSLA方式の2種類の3Dプリンター技術を用い,尋常性ざ瘡(ニキビ)治療に適した,オーダーメイド可能な鼻ニキビ治療用薬物放出デバイスの開発について紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Sachs E. M. et al., U. S. Patent 5, 204, 055(1993).
    2) Goyanes A. et al., Eur. J. Pharm. Biopharm., 89, 157–162(2015).
    3) Goyanes A. et al., J. Controlled Release, 234, 41–48(2016).
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