ファルマシア
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腸内細菌叢の構成バランスの調節による炎症性腸疾患の制御
柏倉 淳一
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2017 年 53 巻 7 号 p. 722

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抄録

炎症性腸疾患(inflammatory bowel diseases:IBD)は腸管に慢性的な炎症および潰瘍を引き起こす疾患の総称であり,クローン病と潰瘍性大腸炎が含まれる.我が国におけるIBDの患者数は約20万人であり,現在も増加傾向にある.IBDの病態は未だ不明な点が多いが,要因として免疫系や腸内細菌叢の構成の異常 (dysbiosis) が関わると考えられる.疫学的見地よりIBDと大腸がんとの関連が示唆されており,IBDの病態を解明することは大腸がんの予防治療を考える上でも重要である.Interleukin(IL)-33はIL-1ファミリーに属するサイトカインで,ネクローシスに伴い細胞外に放出され, 受容体であるST2を介して免疫機能を調節する.IL-33をマウスの腹腔内に投与すると,Th2サイトカイン依存的な杯細胞の過形成やIgE濃度の上昇などが観察されることから,IL-33は2型免疫応答を介してアレルギーや寄生虫感染に関与すると考えられている.IBDの患者では腸管粘膜中のIL-33,ST2および可溶性ST2の増加やこれらの遺伝子多型が疾患の進行に関与することが報告されている.一方,ST2の発現は大腸がんの進行と負の相関を示すことから, IL-33は大腸がんを抑制すると想定され, IL-33がIBDにどのように関わるかについての統一的見解は得られていない.本稿では,KannegantiらによるIL-33を基軸としたIBDの調節機構の解明に関する論文を紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Feagins L. A. et al., Nat. Rev. Gastroenterol. Hepatol., 6, 297–305(2009).
2) Kondo Y. et al., Int. Immunol., 20, 791–800(2008).
3) Schmitz J. et al., Immunity, 23, 479–490(2005).
4) Malik A. et al., J. Clin. Invest., 126, 4469–4481(2016).

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© 2017 The Pharmaceutical Society of Japan
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