ファルマシア
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53 巻, 7 号
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目次
  • 2017 年 53 巻 7 号 p. 654-655
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル フリー
    特集:ストレスなんかに負けるもんか! うつ病の最前線
    特集にあたって:日本におけるうつ病患者数が年々増加を続けている.うつ病治療には,周囲の理解とサポートが重要である.希死念慮もしばしば見られ,大きな問題となる.治療薬に関しては「アミン仮説」を基に長年多くの良薬が開発され,治療に貢献してきた.一方で研究面においては,がんやアルツハイマー病におけるような「形態的病態変化」が伴わない「機能性疾患」ゆえの困難さを強いられてきた.最近,研究手法の発展により,うつ病に関する新たな視点が数多く生まれ始めている.それを基盤とした研究開発によって,きめ細やかで的確なうつ病治療への道が開かれようとしている.本特集号では,現在のうつ病治療の最前線と,研究の現状,近い将来の展望を第一線でご活躍の先生方にご執筆いただいた.
    表紙の説明:「元気出せよ」と励ましてはいけないと言われ続けてきた「うつ病」.もし簡単・適確に治せる病気になったなら,周囲も何のストレスも感じることなく「がんばろう!」と言えるはず.そんな日もそう遠くはないと感じさせる最近の研究・開発,そしてそれをささえる医療現場での薬剤師の活躍.長井博士も見守る中,うつ病克服への力強い歩みが進んでいる.
オピニオン
Editor's Eye
セミナー
  • 坂本 将俊
    2017 年 53 巻 7 号 p. 663-667
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル フリー
    我が国での抗うつ剤の歴史は1958年に世界初の抗うつ剤であるイミプラミン(商品名:トフラニール)が発売されたところから始まった。
    イミプラミンが発売されてから50年以上が経ち、抗うつ剤も少しずつ進化してきた。初期の抗うつ剤は副作用に大きな問題があったが、現在の抗うつ剤は安全性に優れるものが多くなってきた。しかし現在においても抗うつ剤の基本的な原理はいまだ変わっていない。
    このコラムでは、現在使われている抗うつ剤について、その効果・副作用と限界について、抗うつ剤の歴史をみながら照会する。
話題
  • 初期症状,重症度に合わせた対応:薬剤師向け
    白井 毅
    2017 年 53 巻 7 号 p. 668-672
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル フリー
    うつ病と聞くと,薬剤師の多くは「SSRI, SNRI」「励まさない」「相互作用」などの言葉を思い浮かべると思うが,発症原因や症状によるうつ病の分類,実際にうつ病患者に関わる際の注意事項,臨床現場において相互作用や副作用以外に薬剤師が注意すべき項目について,知っているようで曖昧な点は多いと思う.本稿では,2016年改訂の日本うつ病学会の治療ガイドラインをベースにうつ病患者への対応について紹介する.
話題
  • 工藤 浩史
    2017 年 53 巻 7 号 p. 673-675
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル フリー
    がん対策推進基本計画に基づき、日本のがん医療体制の整備が行われてきた。各都道府県や医療圏毎にがん診療連携拠点病院が整備され、がん医療の中核を担っている。
    しかし、拠点病院の現況報告において、精神科医や心理士などの配置については十分と言える状況になく、がん患者全員に、専門的精神心理的ケアを行うことは不可能な状況となっている。
    どの段階のがん患者に対しても接している医師や看護師、薬剤師が、がん患者の心理状態を理解し対応することでトリアージ機能を担い、より深い対応が必要なケースは専門家に繋ぐことが可能となる。結果として限りある資源を有効活用でき、がん対策推進基本計画の課題を達成できるものとなる。この現状と薬剤師教育への取り組みについて紹介する。
セミナー
  • イメージングとバイオマーカー
    森 麻子, 岡本 泰昌, 山脇 成人
    2017 年 53 巻 7 号 p. 676-680
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル フリー
    うつ病は抑うつ気分と興味または喜びの喪失など多様な症状で構成された幅広い症候群である。精神疾患の脳画像研究において、高い空間分解能が得られ、被爆もなく非侵襲的に脳血流動態を観察する手法として、機能的磁気共鳴画像法 (functional Magnetic Resonance Imaging: fMRI)がある。本稿では、うつ病でfMRIを用いた脳画像研究と、抗うつ薬に関連して見られる脳機能変化を概説し、最後にわれわれがこれまで行ってきたうつ病の診断・治療に関するバイオマーカー開発に向けた研究を紹介する。
セミナー
  • 北岡 志保, 古屋敷 智之
    2017 年 53 巻 7 号 p. 681-685
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル フリー
    うつ病患者の末梢血で炎症関連分子の上昇や好中球や単球など免疫細胞の増加が報告されている。また、社会ストレスはうつ病のリスク因子であり、ヒトや動物のストレスモデルでも、炎症関連分子が上昇し、免疫細胞が増加する。本稿では、ストレスによる炎症性サイトカインやプロスタグランジンといった炎症関連分子の誘導と免疫細胞の増加、それらのうつ症状への関与と働きについて、ヒトおよび動物のストレスモデルを用いた前臨床研究やうつ病患者を対象とした臨床研究から得られた知見を紹介する。
最前線
最前線
  • 斎藤 顕宜, 山田 光彦
    2017 年 53 巻 7 号 p. 691-695
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル フリー
    モノアミン再取込み部位をターゲットとした抗うつ薬の開発は諸外国においても既に終了しており、欧米では多重作用メカニズム型の薬剤が複数承認されている。一方、最近では、グルタミン酸神経やオピオイド受容体に作用する候補化合物が注目を集めている。なかでも、産学連携プロジェクトとして我が国で開発が進められているオピオイドδ受容体作動薬が、全く新しい作用機序をもつ画期的な抗うつ薬となるものと強く期待している。
話題
話題
FYI(用語解説)
  • 北岡 志保, 古屋敷 智之
    2017 年 53 巻 7 号 p. 702_1
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル フリー
    げっ歯類を用いたうつ病モデルの1つである.このモデルでは,解析対象のマウスに最低2週間,毎日異なる軽度のストレスを負荷する.ストレスは予測できない順で動物に負荷することがこのモデルの特徴で,快感覚の消失,新奇環境における摂食までの時間の延長といった行動変化が誘導される.これらの行動変化は抗うつ薬の反復投与により改善される.
  • 北岡 志保, 古屋敷 智之
    2017 年 53 巻 7 号 p. 702_2
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル フリー
    げっ歯類を用いたうつ病モデルの1つである.このモデルでは,解析対象のマウスを体格が大きく攻撃性の強いマウスの攻撃に1日10分間,10日間連続で曝露し,その後,マウスの行動変化を調べる.反復社会挫折ストレスは社会性の減弱(社会忌避行動の誘導)や,不安亢進,快感覚の消失といったうつ病でみられる症状を誘導する.反復社会挫折ストレスによる社会忌避行動の誘導は抗うつ薬の反復投与により改善する.つまり,このモデルは予測妥当性を満たすうつ病の動物モデルとして注目されている.
  • 北岡 志保, 古屋敷 智之
    2017 年 53 巻 7 号 p. 702_3
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル フリー
    マクロファージをLPSで処理すると炎症性サイトカインの産生が誘導される.さらに,LPSで2回目の処理をすると,1回目のLPS処理と比較して,炎症性サイトカイン産生の増加が観察される.プライミングとはこのような現象を指し,1回目の刺激に対する反応と比較して,2回目の刺激に対する反応性が増大することや反応時間が短縮することを意味する.プライミングはミクログリアでも観察される.プライミングが誘導されるメカニズムについてはマクロファージでの解析が進んでおり,1つのメカニズムとしてエピゲノム状態の変化が関与することが示されている.
  • 斎藤 顕宜, 山田 光彦
    2017 年 53 巻 7 号 p. 702_4
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル フリー
    ハミルトン不安評価尺度(HAM-A)およびうつ病評価尺度(HAM-D)は,不安神経症ならびにうつ病の様々な症状を評価するために1959年と1960年にHamiltonが開発した評価尺度である.HAM-A評価項目には,不安に伴う精神症状や自律神経症状,不眠,認知障害,抑うつ気分などが含まれる.HAM-D評価項目には,抑うつ気分,罪業感,精神運動抑制,精神的不安,身体症状などが含まれる.MADRSは,1978年にÅsbergらによって開発された主観的精神病理症状40項目と客観的精神病理症状25項目から構成される包括的精神病理学評価尺度(Comprehensive Psychopathological Rating Scale)の65症状項目の中から,うつ状態を評価するための10項目が抽出されて作成された尺度である.精神症状を中心とした抑うつ症状と無快感症の評価を重視しているとされている.
承認薬の一覧
  • 新薬紹介委員会
    2017 年 53 巻 7 号 p. 703
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル フリー
    本稿では厚生労働省が新たに承認した新有効成分含有など新規性の高い医薬品について,資料として掲載します.表1は,当該医薬品について販売名,申請会社名,薬効分類を一覧としました.
    本稿は,厚生労働省医薬安全局審査管理課より各都道府県薬務主管課あてに通知される“新医薬品として承認された医薬品について”等を基に作成しています.今回は,平成29年3月30日付分の情報より引用掲載しています.また,次号以降の「承認薬インフォメーション」欄で一般名,有効成分または本質および化学構造,効能・効果などを表示するとともに,「新薬のプロフィル」欄において詳しく解説しますので,そちらも併せて参照して下さい.
    なお,当該医薬品に関する詳細な情報は,医薬品医療機器総合機構のホームページ→「医療用医薬品」→「医療用医薬品 情報検索」(http://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuSearch/)より検索できます.
新薬のプロフィル
  • 馬場 祐了, 桑原 光弘
    2017 年 53 巻 7 号 p. 704-705
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル フリー
    血友病B[血液凝固第IX因子(factor IX:FIX)欠乏症]は,X染色体連鎖劣性遺伝性の出血性疾患であり,FIXタンパク質の欠損または機能低下により生じる希少疾患である.FIXを補充することでFIXレベルを上昇させ,血液凝固因子の欠乏を一時的に補正し,出血を抑制する補充療法が標準的な治療方法である.
    イデルビオン®静注用[一般名:アルブトレペノナコグ アルファ(遺伝子組換え),以下本剤]は,CSLベーリングが静脈内投与の頻度を減少させ,高いFIX活性を持続することを目的として開発した.
新薬のプロフィル
家庭薬物語
  • 植木 拓朗
    2017 年 53 巻 7 号 p. 708-709
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル フリー
    1968年に発売された「南天のど飴」.もうすぐ発売から50年を迎えるが、発売当初は食品として販売されており,現在の医薬品のど飴ではなかった.南天のど飴は咳止め効果が認められ食品から医薬品へとかわった歴史がある.また、本品は医薬品であるにも関わらず風味にこだわっている点を紹介するとともに,生活者の方々により適正な情報を与えるにあたり,当社で取り組んでいる咳止め作用に関する研究内容も紹介する.
薬学を糧に輝く!薬学出身者の仕事
くすりの博物館をゆく
日本ベンチャーの底力 その技術と発想力
  • 関根 喜之
    2017 年 53 巻 7 号 p. 714-716
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル フリー
    当社は,ポスト・バイオ医薬として特殊ペプチドを世に送り出す目的で,2006年7月に東京大学大学院理学系研究科の教授である菅 裕明(現:当社社外取締役)と窪田規一(現:当社代表取締役)により設立された.設立当初は知財やビジネスモデルについての戦略を立て,菅研究室により開発された知財・技術を取り込むことにより,創薬企業として研究開発を推進する体制の構築に努めた.2015年12月には東証第一部市場への市場変更を果たしている.なお,当社のビジネスモデルに興味のある方は,ビジネス上の特許戦略について窪田による記事が本誌に掲載されている.また,菅らが開発したflexizymeやflexible in-vitro translation system(FIT)システム,random peptide integrated discovery(RAPID)ディスプレイなどの詳細な解説は,過去の本誌の記事を参照していただきたい.当社では,菅研究室から導入した技術に加え,さらに特殊ペプチドを活用した新しいアプローチによるビジネスの展開も試みているので,近年の研究開発の動向も含めここに紹介したい.
トピックス
  • 西川 泰弘
    2017 年 53 巻 7 号 p. 718
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル フリー
    炭素に4つの炭素官能基が結合する不斉中心の構築は,不斉合成研究が進展した現代においてもなお,挑戦的課題である.今回Krischeらは,メタノールを炭素源とする高エナンチオ選択的炭素-炭素結合形成反応によって,第四級不斉炭素を構築することに成功したので,以下に紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Nguyen K. D. et al., J. Am. Chem. Soc., 138, 14210-14213(2016).
    2) Moran J. et al., Nat. Chem., 3, 287-290(2011).
  • 恩田 勇一
    2017 年 53 巻 7 号 p. 719
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル フリー
    近年,低分子と高分子の中間に位置付けられる中分子が注目を集めており,ペプチド,核酸,糖鎖をベースとした中分子創薬が盛んに研究されている.低分子は経口投与で細胞内分子を標的にすることができる反面,タンパク質間相互作用(PPI)など相互作用面が大きい標的を捉えることは難しい.一方,高分子である抗体は,生体が持つ免疫システムを利用することでPPIの標的分子に特異的に結合できるが,経口投与が困難であり,細胞内分子を標的にできない.したがって,低分子と高分子の特徴を併せ持つ中分子を利用することで上記課題を解決し,細胞内の創薬標的にアプローチできると期待されている.本稿では,最近Fujiwaraらによって報告された,細胞内PPIの1つであるp53-HDM2相互作用を阻害する立体構造規制環状ペプチドの創製について概説する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Fujiwara D. et al., Angew. Chem. Int. Ed., 55, 10612–10615(2016).
    2) Chène P., Nat. Rev. Cancer, 3, 102–109 (2003).
    3) Suzuki N., Fujii I., Tetrahedron Lett., 40, 6013–6017(1999).
  • 金 尚永
    2017 年 53 巻 7 号 p. 720
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル フリー
    痛風は別名「帝王病」「贅沢病」と呼ばれ,血液中の尿酸が過剰になって結晶化することで,激しい関節痛が起こる疾患である.近年食習慣の変化に伴い,アメリカでは過去20年間で患者数が2倍に,日本でも3倍に増加している.血液中の尿酸は,摂取したプリン体が体内で代謝を受けることにより, ヒポキサンチン,キサンチンを経て蓄積する最終生成物であるが,これにはキサンチンオキシダーゼ(XO)という酵素が深く関与している.今回Hondaらは,コーヒー愛飲者は痛風の発症が有意に減少するという報告に着目し,コーヒーに含まれる新たなXO阻害活性成分を発見したので紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Choi H. K. et al., Arthritis Rheum., 56, 2049–2055(2007).
    2) Honda S., Masuda T., J. Agric. Food Chem., 64, 7743–7749(2016).
    3) Honda S. et al., Biosci. Biotechnol. Biochem., 78, 2110–2116(2014).
  • 横山 武司
    2017 年 53 巻 7 号 p. 721
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル フリー
    リーシュマニア症は,サシチョウバエの吸血によって,原生動物であるリーシュマニアが人体へ感染することで引き起こされる,寄生虫感染症である.世界保健機関(WHO)は治療薬の1つとして,細菌型リボソームを標的とする抗生物質パロモマイシンの投与を推奨している.本稿で紹介するZhangらの論文では,リーシュマニアリボソームの高分解能構造を基に,パロモマイシンがいかにしてリーシュマニアに作用するのかに迫っている.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) World Health Organization Tech. Rep. Ser., 949(2010).
    2) Ogle J. M. et al., Science, 292, 897–902(2001).
  • 柏倉 淳一
    2017 年 53 巻 7 号 p. 722
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル フリー
    炎症性腸疾患(inflammatory bowel diseases:IBD)は腸管に慢性的な炎症および潰瘍を引き起こす疾患の総称であり,クローン病と潰瘍性大腸炎が含まれる.我が国におけるIBDの患者数は約20万人であり,現在も増加傾向にある.IBDの病態は未だ不明な点が多いが,要因として免疫系や腸内細菌叢の構成の異常 (dysbiosis) が関わると考えられる.疫学的見地よりIBDと大腸がんとの関連が示唆されており,IBDの病態を解明することは大腸がんの予防治療を考える上でも重要である.Interleukin(IL)-33はIL-1ファミリーに属するサイトカインで,ネクローシスに伴い細胞外に放出され, 受容体であるST2を介して免疫機能を調節する.IL-33をマウスの腹腔内に投与すると,Th2サイトカイン依存的な杯細胞の過形成やIgE濃度の上昇などが観察されることから,IL-33は2型免疫応答を介してアレルギーや寄生虫感染に関与すると考えられている.IBDの患者では腸管粘膜中のIL-33,ST2および可溶性ST2の増加やこれらの遺伝子多型が疾患の進行に関与することが報告されている.一方,ST2の発現は大腸がんの進行と負の相関を示すことから, IL-33は大腸がんを抑制すると想定され, IL-33がIBDにどのように関わるかについての統一的見解は得られていない.本稿では,KannegantiらによるIL-33を基軸としたIBDの調節機構の解明に関する論文を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Feagins L. A. et al., Nat. Rev. Gastroenterol. Hepatol., 6, 297–305(2009).
    2) Kondo Y. et al., Int. Immunol., 20, 791–800(2008).
    3) Schmitz J. et al., Immunity, 23, 479–490(2005).
    4) Malik A. et al., J. Clin. Invest., 126, 4469–4481(2016).
  • 萩原 宏美
    2017 年 53 巻 7 号 p. 723
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル フリー
    近年,医療情報データベースの利活用による新たな市販後安全対策がすすめられ,厚生労働省や医薬品医療機器総合機構(PMDA)を中心にデータベースの構築のための「日本のセンチネル・プロジェクト」が実施されている.このプロジェクトは,米国食品医薬品局(FDA)の「センチネル・イニシアティブ」をモデルにしている.センチネル・イニシアティブでは,電子医療情報データベースを構築し,市販後の積極的なサーベイランスを実施することを目的とし,2012年までに1億人規模のデータ利活用を目標にした. 2009年のミニセンチネルパイロット研究を皮切りに,科学的手法の開発が始められ,2016年にセンチネル・イニシアティブがついに本格始動した.そこで,本稿では,センチネルシステムと既存の研究結果が一致することを示した最初の報告であるGagneらの論文を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Gagne J. J. et al., Clin. Pharmacol. Ther., 100, 558-564(2016).
    2) Toh S. et al., Arch. Intern. Med., 172, 1582-1589(2012).
  • 色川 隼人
    2017 年 53 巻 7 号 p. 724
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル フリー
    近年,多剤耐性菌によって引き起こされる感染症の罹患率,死亡率の上昇が,途上国のみならず先進国でも深刻化している.メチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (MRSA) 以外にもバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)や第三世代セファロスポリン耐性グラム陰性菌などが報告されており,世界保健機関(WHO)によれば数十年後には,がんによる死亡率を超える可能性も指摘されている.1)このような状況にもかかわらず,多剤耐性菌に効果的な抗菌薬は少なく,新規作用機序の抗生物質の発見・開発が急務である.
    本稿では,ヒトの鼻腔内から単離されたブドウ球菌の一種であるStaphylococcus lugdunensis(S. lugdunesis)が産生するルグドゥニン(Lugdunin)という化合物が,MRSAをはじめとする様々な病原菌に効果的であることを示したZippererらの論文を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) WHO. Antimicrobial resistance:global report on surveillance 2014. http://www.who.int/drugresistance/documents/surveillancereport/en/(2014).
    2) Zipperer A. et al., Nature, 535, 511–516 (2016).
    3) Krismer B. et al.,PLoS Pathog., 10, e1003862(2014).
  • 井上 浄
    2017 年 53 巻 7 号 p. 725
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル フリー
    便が薬になる.近年,腸内細菌に関する研究が注目を浴び,便が薬になるという事実を耳にした方は多いかもしれない.一方で,初めて聞く人にとっては衝撃であることも事実であろう.実は,この便移植という便を薬として用いる研究・治療法は,意外にも歴史が古く,1700年前の中国の文献に記載があるとされている.また,医学分野における論文については,1958年に偽膜性腸炎に対する症例報告がある.1)その後,2013年に発表された論文により便移植の有効性が示され,あらためて大きな衝撃が走った.2)このNEJM誌に掲載された論文で便移植を知った方も多いかもしれない.再発性Clostridium difficile感染症に対し,便移植の効果が無再発治癒率81%と非常に高く(同時に行っていたバンコマイシンによる治療では20〜30%),難治性,再発例の高い感染症に対し有効な非常に画期的な治療法であることが示されている.
    このような背景から,近年では便移植はこれまで治療が難しいとされてきた疾患に対する治療法としても期待されている.難病指定疾患である潰瘍性大腸炎もその1つであり,患者数は国内で17万人を超え,毎年1万人が増加している現状で,効果的な治療法の開発が急務である.潰瘍性大腸炎に対する便移植の効果については既にいくつかの報告があり,治療効果が十分ではない,もしくは治療効果がないという結論であり,従来の方法では不十分であることが示唆されている.本稿では,この潰瘍性大腸炎に対する便移植療法の新戦略となる論文を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Eiseman B. et al., Surgery, 44, 854-859(1958).
    2) van Nood E. et al., N. Engl. J. Med., 368, 407-415(2013).
    3) Ishikawa D. et al., Inflamm. Bowel. Dis., 23, 116-125(2017).
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総説目次
談話室
  • 向後 麻里
    2017 年 53 巻 7 号 p. 743_1
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル フリー
    数年前より、桜やつつじ、ばらの時期になると近所を散歩している。最初の散歩は、江戸時代から続く桜の名所である飛鳥山公園である。数十年ぶりに散歩した公園は、美しく整備され、桜も大きく育ち、情緒ある大人の公園に生まれ変わっていた。つつじの時期になると飛鳥山公園から旧古河庭園、そして六義園まで続く散歩道はとても美しい。四季折々の景色が楽しめる。こんな身近に素敵な名所があったとは。一度、散歩はいかが、近所に素敵な名所があるかも。
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