ファルマシア
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疾患治療ターゲットとしてのRNAの可能性
中沢 信吾
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2018 年 54 巻 10 号 p. 984

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抄録

近年,RNAが核酸医薬としてのみでなく,疾患治療の標的としても注目を浴びてきている.例えば2017年2月には福田らが,二本鎖RNA特異的アデノシンデアミナーゼ2型(adenosine deaminases acting on RNA type 2:ADAR2)とガイドRNAによる部位特異的RNA編集技術を報告した.この技術では,ADAR2がアデノシン(A)をイノシン(I)へと変化させる「A to I RNA編集」を利用しており,翻訳過程でイノシンがグアノシン(G)と同等に読まれることで,翻訳産物の編集も達成される.同年10月にはCoxらが,CRISPR associated proteins(Cas)を組み合わせたA to I RNA編集技術を報告した.Coxらは,RNAに対する結合性とエンドヌクレアーゼ活性を持つCas13の応用により,他のRNA編集法と比較して標的特異性を高めたと主張している.加えて,疾患関連遺伝子変異の修復や,全転写産物のRNA-seqによるオフターゲットの検証も行われ,治療標的としてのRNAの有用性・実用性が,より高められたと思われる.本稿では,Coxらの「RNA editing for programmable A to I replacement(REPAIR)」と命名された技術について紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Fukuda M. et al., Sci. Rep., 7, 41478(2017).
2) Nishikura K., Annu. Rev. Biochem., 79, 321-349(2010).
3) Cox D. B. T. et al., Science, 358, 1019-1027(2017).
4) Abudayyeh O. O. et al., Science, 353, aaf5573(2016).

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© 2018 The Pharmaceutical Society of Japan
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