ファルマシア
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機械学習は,同一ファミリーに属する膜輸送体の基質認識を区別できるか?
増尾 友佑
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2020 年 56 巻 12 号 p. 1136

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抄録

膜輸送体は,基質化合物を細胞またはオルガネラ内外に輸送し,恒常性維持に寄与する.薬物を認識する膜輸送体は,特定の化学構造を有する化合物のみが基質となるのではなく,多様な化合物が基質となるため,化学構造情報のみに基づいて膜輸送体の基質となるかを判別する手法は確立されていない.有機アニオン膜輸送体1(organic anion transporter 1: OAT1)/SLC22A6とOAT3/SLC22A8は,腎尿細管上皮細胞の血管側の側底膜に発現し,基質化合物を血液から腎尿細管細胞へ取り込む.OAT1とOAT3の基質は重複が多いが,両者で異なる基質を輸送する例もある.本稿では,メタボロミクスから同定されたOAT1とOAT3の生体内基質化合物の構造情報群に,機械学習を適用することで,これら膜輸送体の基質認識特性を明らかにしたNigamらの論文を紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Nigam A. K. et al., J. Biol. Chem., 295, 1829-1842(2020).
2) Wikoff W. R. et al., J. Proteome Res., 10, 2842-2851(2011).
3) Bush K. T. et al., J. Biol. Chem., 292, 15789-15803(2017).

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© 2020 The Pharmaceutical Society of Japan
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