ファルマシア
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56 巻 , 12 号
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目次
  • 2020 年 56 巻 12 号 p. 1064-1065
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/01
    ジャーナル フリー
    電子付録
    ミニ特集:B型肝炎ウイルスの感染機構と治療薬開発の最前線
    ミニ特集にあたって:今年のノーベル生理学賞は,C型肝炎ウイルスの発見に授与されることが報道された.B型肝炎ウイルスも,45年前の1976年に診断とワクチン開発に対する貢献に対して授与されている.薬物療法としては,インターフェロンあるいは逆転写酵素阻害剤が中心となっており,種々機序の医薬品が開発されているC型肝炎に比べると治療薬は少なく,再発や薬剤耐性の獲得も課題として指摘され,作用機序の異なる薬剤の開発も現在進められている.本ミニ特集号では,B型肝炎ウイルスの治療法,創薬標的やその評価モデルに関する研究,宿主側の応答を決める遺伝的要因など,B型肝炎ウイルスをとりまく最近の話題や研究成果,今後の展望をご紹介いただいた.
    表紙の説明:明智光秀の桔梗紋から始まった薬用植物と家紋シリーズは,今回の織田木瓜紋で幕を閉じる.明智光秀と織田信長といえば,戦国時代の最大のクーデターかつ謎とされる本能寺の変がすぐに頭に浮かぶが,織田信長の家紋もまた謎が多い.織田木瓜紋は,瓜紋に分類されるが,その一方で,家紋の外側はウリではなく,地上に営巣する鳥の巣であるとの説が有力である.電子付録では,家紋の謎,織田信長の人物像,本能寺の謎に迫るとともに,ウリ科の植物も取り上げる.
オピニオン
  • 新井 洋由
    2020 年 56 巻 12 号 p. 1063
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/01
    ジャーナル 認証あり
    筆者は,2019年に東京大学大学院薬学系研究科を退職し現職を務めている.学部4年生の研究室配属以来,約40年間基礎研究ばかりに傾注してきたので,現職にはまだまだ戸惑いもある.しかし一方で,医薬品開発,信頼性保証,製販後の安全性,薬害救済などの現場に日々触れ,恥ずかしながら少し視野が広がった気もする.そうした状況で,薬学界が社会に間断なく情報を発信し,医療人として国民の信頼をより高められるよう,薬学力を更に高めていただきたいと期待している.現在,薬学部卒業生は年間1万人余りで,同世代の人口は約120万人なので,日本人口のおよそ1%を占めている.1%もいる薬学卒業生が国民に貢献できる力は大きいし,国民もそう期待していると思う.
Editor's Eye
ミニ特集 セミナー
ミニ特集 セミナー
  • 茶山 一彰
    2020 年 56 巻 12 号 p. 1076-1078
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/01
    ジャーナル 認証あり
    B型肝炎ウイルス(HBV)はヒト以外の生物では有効な増殖が得られにくく,チンパンジー,ツパイなど限られた動物の肝細胞でのみ,増殖がみられる.治療法の開発にはマウスなどの小動物を用いた研究が必須であるが,HBVはマウスには感染しないことが課題であった.筆者らは広島大学理学研究科で開発されたヒト肝細胞キメラマウスを使用して感染実験を行い,薬剤の効果や増殖のkineticsの研究を行っている.最近は肝炎モデルも作製し,治療の開発を行っている.本稿では,ヒト肝細胞キメラマウスを用いることで実現したHBVの感染実験とその治療評価,および本結果に基づく臨床実験について筆者らの研究成果を紹介したい.
ミニ特集 最前線
  • 深野 顕人, 渡士 幸一
    2020 年 56 巻 12 号 p. 1079-1083
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/01
    ジャーナル 認証あり
    B型肝炎ウイルス(HBV)治療薬のラインナップはインターフェロン製剤と核酸アナログ型逆転写酵素阻害薬に限られており、その選択肢は驚くほど少なく、さらにそれらによるHBV感染の完全なる治癒は難しい。そのため新規治療薬の開発が強く望まれるものの、その開発研究は思うように進んでこなかった。本稿では、これまでHBV治療薬開発の妨げとなっていた主な要因、またそれを克服することにより近年急激に加速してきた感染機構の解析や創薬研究を紹介する。B型肝炎創薬研究は、まさにこれからである。
ミニ特集 最前線
ミニ特集 最前線
  • 五十川 正記
    2020 年 56 巻 12 号 p. 1089-1093
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/01
    ジャーナル 認証あり
    B型肝炎ウイルス(HBV)は,一過性および持続性感染を引き起こすDNAウイルスである.HBV感染が一過性に終わるか,持続するかは,ウイルスに対する宿主免疫応答によって決定される.HBVに対するワクチンは存在するが,現在のところ持続性HBV感染に対する効果的な治療法は存在しない.HBVに対する宿主免疫応答を明らかにすることは,HBVによって引き起こされる病態を理解するだけでなく,持続性HBV感染に対する治療法の確立のためにも極めて重要である.
ミニ特集 最前線
ミニ特集 最前線
ミニ特集 最前線
話題
  • 渡邊 博志, 丸山 徹
    2020 年 56 巻 12 号 p. 1109-1111
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/01
    ジャーナル 認証あり
    筆者らは、病院薬剤師または薬局薬剤師として5年以上の実務経験を有する実務家教員である。これまで実務家教員の臨床体験に基づく教育と研究の実践に努め、「臨床と基礎の接点を起点とした融合型トランスレーション研究」を展開してきた。今回は「アンメットな腎疾患の病態制御を指向した診断・治療戦略への挑戦」として、腎臓病の課題に対する私達の取り組みについて紹介する。すなわち、1.腎臓病に関わる酸化ストレスについて、質量分析装置を用いた評価方法、2.腎臓病の病態進展因子としての尿毒症物質の関与とその分子機構、3.腎臓病を制御するための抗酸化・炎症制御薬の開発について紹介する。
話題
FYI(用語解説)
  • 茶山 一彰
    2020 年 56 巻 12 号 p. 1118_1
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/01
    ジャーナル 認証あり
    HBs抗原とHBe抗原は,ウイルスが産生するタンパクのうち血液検査で検出される主要なタンパクである.ウイルスが感染すると血液中にはウイルス粒子のほかにcapsidを含まない小球状粒子と管状粒子が産生される.HBs抗原はこのいずれの粒子にも存在するタンパクである.完全な粒子はHBs抗原タンパクの先端にpreS1,preS2タンパクを有していて,ウイルスが細胞に感染する際に結合するレセプターを形成している.HBe抗原はウイルスが産生する可溶性タンパクであり,ウイルスの免疫反応からの逃避に役立っている.臨床的にはHBs抗原はウイルス感染の診断に用いられ,HBe抗原はウイルス増殖が活発であることを示す指標として用いられる.
  • 深野 顕人, 渡士 幸一
    2020 年 56 巻 12 号 p. 1118_2
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/01
    ジャーナル 認証あり
    B型肝炎ウイルスのヌクレオキャプシドに内包されているウイルスゲノムは,多くが不完全二重鎖DNA(relaxed circular: rcDNA)であるが,rcDNA産生過程で中間的に産生される直鎖状二重鎖DNA(double-stranded linear DNA: dslDNA)なども内包されることが知られる.主にrcDNAは核内へ移行後,宿主によるDNA修復を受け,完全二重鎖DNA(covalently closed circular DNA: cccDNA)を形成してウイルス複製やウイルス抗原産生の鋳型となる.一方で,一部のウイルスゲノムはdslDNAを介して細胞染色体に組み込まれ,ウイルス抗原産生や病態発現に寄与すると考えられている.
  • 大塚 基之
    2020 年 56 巻 12 号 p. 1118_3
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/01
    ジャーナル 認証あり
    二本鎖DNA切断時のDNA修復機構の1つ.二本鎖DNAが切断されると「非相同末端結合(NHEJ)」や「相同組換え(HR: homologous recombination)」と呼ばれる分子機構によって修復される.NHEJは,DNA切断部の端と端が直接つなげて修復される機構であるが,このときに余計なDNA配列の挿入などのエラーが生じることがある.鋳型を用いないため細胞周期を通じて活性がある.一方HRは,切断部位と相同な配列を持つ姉妹染色分体を鋳型としてコピーすることによって,DNA切断部位を修復する.これは鋳型が利用可能なDNA複製直後のS期とG2期に主に用いられる.
  • 五十川 正記
    2020 年 56 巻 12 号 p. 1118_4
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/01
    ジャーナル 認証あり
    免疫とは,その名が示す通り疫(病気)から免れるために発達した機能であり,その本質的な役割は,体内に侵入する病原体を排除することである.一方で,個体自身の細胞や,病原性を持たない異物に対しては,免疫応答は通常起こらず,これを免疫寛容と呼ぶ.免疫寛容が破綻し,個体自身の細胞に対して免疫応答が起こった場合,膠原病などの自己免疫疾患が発症する.病原性を持たない異物への免疫応答による有害事象として,花粉症などがあげられる.免疫寛容の破綻による有害事象とは対照的に,母子感染などにより免疫系が成熟する前にウイルスが持続感染が成立した場合,個体はウイルスを異物として認識せず,免疫寛容が成立し,生涯にわたってウイルス排除が困難になる場合もある.
  • 西田 奈央
    2020 年 56 巻 12 号 p. 1119_1
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/01
    ジャーナル 認証あり
    ヒトは両親に由来する二組の染色体を有しており,染色体上の遺伝子座にDNA配列のバリエーションがあるとき,その1つ1つをアリルと呼ぶ.常染色体の場合には遺伝子座において,両親に由来するアリルを組み合わせで持っており,それをジェノタイプ(遺伝子型)と呼ぶ.また,ある長さにわたって存在する遺伝子座において,遺伝子座のDNA配列の並びが異なるとき,その配列に存在するアリルの組み合わせをハプロタイプと呼ぶ.
  • 西田 奈央
    2020 年 56 巻 12 号 p. 1119_2
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/01
    ジャーナル 認証あり
    関連分析の代表であるケース・コントロール関連分析法は非血縁の患者群と比較対照群を対象として,疾患遺伝子と多型マーカーの連鎖不平衡を検出する手法であり,これをゲノム全域にわたって適用する解析がゲノムワイド関連解析(genome wide association study: GWAS)である.
  • 岩見 真吾, キム カンスウ
    2020 年 56 巻 12 号 p. 1119_3
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/01
    ジャーナル 認証あり
    数理モデルでは,個体の初期状態ならびに様々な個体変数の影響(パラメータ)を考慮して,個体集団の変化を表せる.数理モデルのシミュレーションでは,これら変数が時間経過に伴って変化する様を可視化できる.なお,変数の変化が直前の状態によって完全に決定されるような場合を「決定論的シミュレーション」と呼び,確率的に決定される場合を「確率論的シミュレーション」と呼ぶ.決定論的シミュレーションでは,初期値とパラメータが決まれば,変数の変化は常に同じとなる.
  • 菅野 仁士, 永田 弘典, 石黒 昭博
    2020 年 56 巻 12 号 p. 1119_4
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/01
    ジャーナル 認証あり
    Linear energy transfer(LET:線エネルギー付与)は,放射線の線質を表す指標であり,ある物質中を通過する経路の単位長さあたりに失う放射線エネルギーを表す.単位は主にkeV/µmで表される.LET値が高い放射線は,高LET放射線と呼ばれ,α線,重粒子線などが該当する.なお,一般的な放射線治療で使用されるX線は低LET放射線である.
    参考
    ・ICRP publication 103(国際放射線防護委員会の2007年勧告),(社)日本アイソトープ協会
    ・放射線概論,(株)通商産業研究社
承認薬の一覧
  • 新薬紹介委員会
    2020 年 56 巻 12 号 p. 1121
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/01
    ジャーナル 認証あり
    本稿では厚生労働省が新たに承認した新有効成分含有など新規性の高い医薬品について,資料として掲載します.表1は,当該医薬品について販売名,申請会社名,薬効分類を一覧としました.
    本稿は,厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課より各都道府県薬務主管課あてに通知される“新医薬品として承認された医薬品について”等を基に作成しています.今回は,令和2年9月25日付分の情報より引用掲載しています.また,次号以降の「承認薬インフォメーション」欄で一般名,有効成分または本質および化学構造,効能・効果などを表示するとともに,「新薬のプロフィル」欄において詳しく解説しますので,そちらも併せて参照して下さい.
    なお,当該医薬品に関する詳細な情報は,医薬品医療機器総合機構のホームページ→「医療用医薬品」→「医療用医薬品 情報検索」(http://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuSearch/)より検索できます.
承認審査の視点
最終講義
前キャリアが今に生きること
留学体験記 世界の薬学現場から
トピックス
  • 長尾 一哲
    2020 年 56 巻 12 号 p. 1130
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/01
    ジャーナル 認証あり
    Resveratrolおよびその多量体は抗炎症作用,免疫調節,細胞毒性をはじめとして様々な生理活性を有する天然物である.多量体は,Resveratrolもしくは二量体であるε-Viniferinから生じるフェノキシラジカルを経由して生合成される(図1A).しかしながら,このフェノキシラジカルは複数の反応点を有しているため,生合成を模倣した合成戦略は困難であった.
    StephensonとPrattらは,この制御の難しいラジカルに嵩高い置換基を導入することで扱いやすい長寿命な(persistent)ラジカルとし,生合成を模倣した四量体Nepalensinol BとVateriaphenol Cの全合成を達成している.最近,彼らはこのpersistentラジカルが平衡をもつことを見いだし,不可逆的な環化反応と組み合わせることで,Resveratrolの四量体であるVitisin AとDの初の全合成に成功したので,本稿で紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Keylor M. H. et al., Science, 354, 1260-1265(2016).
    2) Romero K. J. et al., Chem. Soc. Rev., 47, 7851-7866(2018).
    3) Romero K. J. et al., J. Am. Chem. Soc., 142, 6499-6504(2020).
  • 佐藤 亮
    2020 年 56 巻 12 号 p. 1131
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/01
    ジャーナル 認証あり
    グアノシントリホスファターゼであるKRASの変異は,ヒトのがん細胞のおよそ1/4に認められる.KRASは増殖シグナル伝達の上流に位置しており,G12Cなどの変異がKRASに生じると,シグナル伝達経路が恒常的に活性化し,細胞のがん化が引き起こされると考えられている.このように,変異型KRASの阻害剤は有望な抗腫瘍剤のターゲットであるが,KRASの発見から30年以上経過した現在においても,これを標的とする薬剤の開発は成功していない.
    本稿では,KRAS阻害剤として初めてヒト臨床試験で効果が示されたAmgenのG12C変異KRAS(KRASG12C)阻害剤AMG-510の探索研究について紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Lanman B. A. et al., J. Med. Chem., 63, 52-65(2020).
    2) Ostrem J. M. et al., Nature, 503, 548-551(2013).
    3) Patricelli M. P. et al., Cancer Discov., 6, 316-329(2016).
    4) Shin Y. et al., ACS Med. Chem. Lett, 10, 1302-1308(2019).
  • 田中 誠司
    2020 年 56 巻 12 号 p. 1132
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/01
    ジャーナル 認証あり
    近年,世界的にセルフメディケーションの概念が浸透し,生薬由来の医薬品やサプリメントの利用が拡大しているが,その一方で健康被害も増加しており,生薬の有効性と安全性の担保が求められる状況にある.現在,生薬毎に少数の指標成分が定められ,品質が管理されているが,本来生薬は多成分が薬効に寄与しているものであるため,それらを同時に評価するHPLCフィンガープリント法が新たな生薬の品質評価方法として注目されている.本稿では,エンゴサクについてHPLCフィンガープリント法を確立し,クラスター分析および主成分分析を行うことでサンプル間の比較を行ったLuらの報告を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) 榊原 巌,日薬理誌,132, 265-269(2008).
    2) Lu Y. et al., Sci. Rep., 10, 4996(2020).
    3) Hong B. et al., Sci. Rep., 9, 5853(2019).
  • 桑原 直之
    2020 年 56 巻 12 号 p. 1133
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/01
    ジャーナル 認証あり
    SARS-CoV-2ウイルスによる疾患(Corona Virus Disease 2019: COVID-19)は2019年末に中国武漢市で最初に報告され,その後世界中に感染が広がり,2020年3月11日にWHOはCOVID-19のパンデミックを宣言した.現在(2020年8月)までにSARS-CoV-2ウイルスは南極大陸を除く全ての大陸に広がり,感染者数は2.100万人以上,死者数は75万人以上に達している.このパンデミックに対し,多くの研究機関や製薬企業がそのワクチンや治療薬開発を急ピッチで進めているが,本稿では抗ウイルス薬レムデシビルとその標的分子であるSARS-CoV-2 RNA依存性RNAポリメラーゼ(RNA dependent RNA polymerase: RdRp)の複合体構造解析研究を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Yin W. et al., Science, 368, 1499-1504(2020).
    2) Warren T. K. et al., Nature, 531, 381-385(2016).
  • 小池 敦資
    2020 年 56 巻 12 号 p. 1134
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/01
    ジャーナル 認証あり
    飲食物中へのスクロースや異性化糖の使用により,フルクトースの摂取はここ数十年で顕著に増加している.フルクトースの過剰な摂取は肥満や非アルコール性脂肪肝疾患,糖尿病などの発症と強く相関している.フルクトースの摂取は,肝臓における脂質生合成を誘発し,アセチルCoAから脂肪酸の合成を促進する.さらにフルクトースは,腸内細菌によって短鎖脂肪酸に代謝される.しかし,食餌中のフルクトースから肝臓のアセチルCoAや脂質生合成に至る経路や短鎖脂肪酸の脂質生合成への影響については未解明な点が多い.ATPクエン酸リアーゼ(ACLY)はクエン酸からアセチルCoAに変換する酵素であり,糖代謝と脂肪酸生合成を結ぶ重要な酵素として知られている.
    本稿では,肝臓特異的にACLYをノックアウトしたマウス(LAKOマウス)を用いて,同位体標識したフルクトース(13Cフルクトース)による追跡実験を行うことによって,肝臓でのフルクトースからの脂質生合成に腸内細菌が関与することを明らかにした報告を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Jegatheesan P., De Bandt J. -P., Nutrients, 9, 230(2017).
    2) Jang C. et al., Cell Metab., 27, 351-361.e3(2018).
    3) Zhao S. et al., Nature, 579, 586-591(2020).
    4) Zagelbaum N. K. et al., Caldiol. Rev., 27, 49-56(2019).
  • 田村 裕穂
    2020 年 56 巻 12 号 p. 1135
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/01
    ジャーナル 認証あり
    悪性黒色腫(メラノーマ)は,皮膚がんの1つであり,メラニン細胞ががん化することで発生する.MAPキナーゼ(mitogen-activated protein kinase: MAPK)経路は,がん細胞の増殖促進および生存能の獲得に重要なシグナル伝達経路である.B-rapidly accelerated fibrosarcoma(B-Raf)は,MAPK経路を構成するセリンスレオニンキナーゼであるRafキナーゼのサブタイプの1つである.B-Rafの600番目のバリン残基がグルタミン酸残基に置換されたB-Raf変異(BRAF V600E変異)は,下流キナーゼの過剰な活性により,様々ながんの悪性化を引き起こすことが知られている.メラノーマではBRAF V600E変異が高頻度で見られ,これに対してはB-Raf阻害薬(B-Raf inhibitor: BRAFi)が用いられる.
    細胞の運動を制御するアクトミオシンの収縮にはRhoファミリー低分子量Gタンパク質が関与し,そのエフェクター分子であるRhoキナーゼ(Rho-associated coiled-coil-containing protein kinase: ROCK)依存的なミオシン軽鎖2(myosin light chain2: MLC2)のリン酸化が重要である.MLC2のリン酸化は,アクチン繊維上を動くモータータンパク質であるmyosinⅡのモーター活性を上昇させる.MyosinⅡ活性上昇により細胞の収縮力が増大することは,がん細胞の浸潤・転移能の亢進につながる.近年,がんの薬剤耐性獲得に,浸潤・転移を促進するシグナル伝達系が関与することが示された.本稿では,BRAFiおよび免疫チェックポイント阻害薬である抗PD-1抗体に対するメラノーマの薬剤耐性獲得におけるROCK-myosinⅡ経路の関与を検証した報告を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Alexander S., Friedl P., Treands Mol. Med., 18, 13-26(2012).
    2) Jose L. O. et al., Cancer Cell, 37, 85-103.e9(2020).
    3) Sharma P. et al., Cell, 168, 707-723(2017).
    4) Hugo W. et al., Cell, 165, 35-44(2016).
  • 増尾 友佑
    2020 年 56 巻 12 号 p. 1136
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/01
    ジャーナル 認証あり
    膜輸送体は,基質化合物を細胞またはオルガネラ内外に輸送し,恒常性維持に寄与する.薬物を認識する膜輸送体は,特定の化学構造を有する化合物のみが基質となるのではなく,多様な化合物が基質となるため,化学構造情報のみに基づいて膜輸送体の基質となるかを判別する手法は確立されていない.有機アニオン膜輸送体1(organic anion transporter 1: OAT1)/SLC22A6とOAT3/SLC22A8は,腎尿細管上皮細胞の血管側の側底膜に発現し,基質化合物を血液から腎尿細管細胞へ取り込む.OAT1とOAT3の基質は重複が多いが,両者で異なる基質を輸送する例もある.本稿では,メタボロミクスから同定されたOAT1とOAT3の生体内基質化合物の構造情報群に,機械学習を適用することで,これら膜輸送体の基質認識特性を明らかにしたNigamらの論文を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Nigam A. K. et al., J. Biol. Chem., 295, 1829-1842(2020).
    2) Wikoff W. R. et al., J. Proteome Res., 10, 2842-2851(2011).
    3) Bush K. T. et al., J. Biol. Chem., 292, 15789-15803(2017).
  • 高木 彰紀
    2020 年 56 巻 12 号 p. 1137
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/01
    ジャーナル 認証あり
    ドラベ症候群は,約2~4万人に1人の割合で発症する難治性てんかん症候群の1つである.発症が稀であるにもかかわらず,18歳以下の患者では致死率が2割にのぼる重篤なてんかん症候群である.治療は通常の抗てんかん薬に加え,既存治療薬で効果が不十分な場合に使用可能なスチリペントールで行われる.しかしながら,スチリペントール併用療法を行っている患者の4割が週に1回以上の強直間代発作を起こすなど,奏効率は依然として低い.
    フェンフルラミンは,セロトニン放出作用やセロトニン受容体作動作用を介した脳内におけるセロトニンシグナル増強作用を有し,過去に食欲抑制薬として米国で発売されていた.しかしながら60~120mgの高投与量であったことなどから1997年に肺動脈性肺高血圧症,心臓弁膜症のリスクが上昇することが報告され,市場から撤退している.
    本稿では,フェンフルラミンの投与量を体重当たり1日0.4mg(1日最大17mg)の低投与量にすることで,心臓弁膜症,肺動脈性肺高血圧症の副作用発生を抑えながら,スチリペントールでコントロール不良なドラベ症候群のてんかん発作を有意に抑制した臨床試験の結果を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Schoonjans A. S. et al., Ther. Adv. Neurol. Disord., 8, 328-338(2015).
    2) Nabbout R. et al., JAMA Neurol., 77, 300-308(2020).
資料
追悼
  • 中西 守
    2020 年 56 巻 12 号 p. 1138
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/01
    ジャーナル 認証あり
    日本薬学会名誉会員坪井正道先生の訃報に接し,痛恨の念に堪えません.
    先生は1947年に東京大学理学部化学科を卒業され,1953年に理学博士号を取得されました.この年はワトソンとクリックの二人が生命科学の基本である核酸二重らせんを解明した年であります.先生の研究はまさにこの解明に匹敵する内容だと思い,ミシガン大学留学後,東大理学部助教授を経て,東大薬学部の教授になられていた先生の研究室に所属することにしました.
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