抄録
九州の鹿北流域試験地3号沢における2001~2014年の雨水と渓流水の主要な溶存成分濃度の年平均値を算出し、年々変動を調べた。雨水中の非海洋由来のCa2+とCa2+濃度の年平均値には2006、2007年頃にピークが認められたが、他の成分には明瞭な変動傾向が見られなかった。雨水による溶存態無機窒素の年平均流入量は8.9 kg ha−1 y−1で、そのうち約6割がNH4+-Nであった。非海洋由来の硫酸の年平均流入量は34.0 kg ha−1 y−1で、硫酸流入量の95%に相当した。渓流水のK+濃度の年平均値には15年の間に徐々に増加する傾向が認められたが、他の成分には明瞭な変動傾向が見られなかった。東アジア酸性雨モニタリングネットワークの水質管理基準を適用してデータの完全度を評価した結果、雨水、渓流水とも概ね80%以上の高い完全度を示した。