抄録
早生樹であるヤナギは、挿し木栽培が可能であり、萌芽再生能が高いことから、バイオマス資源としての利用が着目されている。ヤナギ樹皮には、ポリフェノール等の有用成分が多く含まれるため、エネルギー利用だけではなく、より高付加価値な利活用の可能性が考えられる。本研究では、低樹齢のエゾノキヌヤナギ及びオノエヤナギについて、樹皮タンニンの化学特性及び効率的抽出法を検討した。樹皮を70% アセトン水で抽出し、タンニンを精製した後、各種機器分析に供した。エゾノキヌヤナギ、オノエヤナギの樹皮に含まれる70% アセトン抽出物量は29.0%、25.8% であり、その中でタンニン量はそれぞれ43.4%、39.4% に達し、高いタンニン含有量であることが分かった。タンニンの主要構成単位は、procyanidin 及び prodelphinidin であった。有機溶媒抽出と25-100℃の水抽出の抽出効率を比較した結果、100℃の水抽出で最も高い抽出物量及びポリフェノール量が得られ、水抽出で効率的に抽出物が得られることが分かった。また、抽出工程を簡便にするため、樹皮と木部を分別せず圧潰する処理を前処理として検討した。その結果、圧潰処理では、粉砕処理と同程度の抽出物量が得られた。低樹齢ヤナギ樹木では、圧潰処理を用いることで、樹皮付の試料で効率的に抽出成分を得られることが明らかになった。