森林総合研究所研究報告
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スギの遺伝的地域性識別のためのSNPパネルの開発と利用
内山 憲太郎 松本 麻子
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2018 年 17 巻 2 号 p. 141-148

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抄録
スギは日本の最も重要な林業樹種であり、その植栽面積は日本の人工林の44%に及ぶ。これまでの遺伝解析から、スギには4つの系統地理学的なグループが存在することが明らかになっている。一般的に、造林時にはそれぞれの地域環境に適応している地域性種苗の利用が遺伝子汚染の観点からも推奨される。しかしながら、スギは集団間の遺伝的分化度が極めて低く、地域の遺伝的グループを明らかにするために、ゲノム内からランダムに選んだ場合には数千のDNAマーカーが必要であった。そこで本研究では、このスギの4つの遺伝的グループを識別可能な最小セットの一塩基多型(SNP) パネルを作成することを目的とする。スギのゲノム上での位置が明らかな2500座のSNPのうち、ゲノム全体から均等に288SNP を選抜し、SNPパネルを構築した。作成したパネルを用いて天然林234個体18集団を解析した結果、そのうちの257座において遺伝子型が決定できた。また、スギの4つの遺伝的グループを明瞭に識別でき、識別能が数千のSNPマーカーを用いた場合と遜色ないことが示された。開発したSNPパネルにより屋久島に植栽された由来不明の人工林のサンプルを解析した結果、屋久島と同じ遺伝的グループに属することを明らかにできた。これらの結果から、今回開発したSNPパネルは、スギの地理的変異の識別や、由来不明な個体の地理的由来を確認することに有用であると考えられた。
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