抄録
広葉樹の用材需要の拡大のために構造性能の高度化が求められている木造建築物に機械的性能に優れた広葉樹種を構造材料として利用することが望まれる。特に木造建築物の構造性能に大きく寄与する接合部に対し入手が比較的容易な小断面の材を利用することが有効であると考えられ、広葉樹を利用した接合部の知見を蓄積することが必要であると考えられる。本報告では貫材の一部に補強材として広葉樹を利用した柱‒貫接合部に関して、補強材の全面横圧縮性能とその柱‒貫接合部の接合部性能との関係を示した。さらに、それらの関係性と、貫材全体を広葉樹とした柱‒貫接合部の貫材の全面横圧縮性能と接合部性能との関係性とを比較した。加えて、降伏点以降の接合部の変形のしにくさに関する指標である剛性を定量的に評価することを目的に、試験結果の簡易なトリリニア化手法 (モーメント‒変形角関係を3線分に置換する手法) を提案した。そして、柱‒貫接合部の試験結果について降伏後の塑性域での剛性を二次剛性と三次剛性として2段階に分けて評価を行った。それらの結果、貫材の全長にわたって厚さ24 mmの補強材を接着した仕様の接合部性能と補強材の全面横圧縮性能との間には、貫材全体を広葉樹とした仕様と同様の傾向があることがわかった。また、トリリニア化によって算出した特性値から、降伏点以降の補強材の形状による接合部の挙動の違いを把握することができた。