森林総合研究所研究報告
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海岸林の生育基盤盛土への深耕が土壌の硬さとクロマツの根の発達に与える効果
野口 宏典 小野 賢二萩野 裕章鈴木 覚
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2021 年 20 巻 3 号 p. 159-168

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抄録
東北地方太平洋沖地震津波で甚大な被害を受けた海岸林の再生では、植栽木の根を深く発達させて津波被害に強くすることを目的として盛土による生育基盤の嵩上げが広く用いられている。しかし、盛土を伴う生育基盤は用いられる工法によっては締め固まりやすく、その硬さが根の発達を妨げる可能性が指摘されている。盛土の硬さを解消する手段として耕起が挙げられるが、根の発達と土の硬さの関係や、耕起が土の硬さと根の発達に与える効果について検証は十分ではない。このため、これらの検証を目的として、盛土を伴い整備された海岸林の生育基盤を対象に1.5m程度の深さまで耕起した深耕区と耕起しない対照区を設定してクロマツ苗を植栽し、根の発達と土の硬さに関する調査を行った。 対照区は地表付近に非常に硬い箇所がみられるなど全般的に硬かったのに対し、深耕区の耕起した深さ範囲では、耕起から30ヶ月後まで、根の発達を阻害するような硬さは見られなかった。植栽木の根は、対照区では植栽から3成長期後も植穴の外にはほとんど伸びていなかったのに対し、深耕区では1成長期後には80cm程度の深さに達し、2成長期後には110cm程度の深さに達した。両区の根の発達の差は深耕により生育基盤の硬さが解消されたことの効果であると考えられた。また、根が侵入した深さにおける土壌硬度の分布から、クロマツの根が侵入しにくくなる土壌硬度の閾値が示された。
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