森林総合研究所研究報告
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高知県のヒノキ人工林において間伐が葉量と幹現存量の生産速度に及ぼす影響
稲垣 善之 中西 麻美深田 英久渡辺 直史
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2021 年 20 巻 4 号 p. 277-285

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抄録
高知県の標高の異なる3地域のヒノキ林において、幹現存量間伐率の異なる調査区を合計10カ所設定し、間伐後10年間の葉量と幹現存量の生産速度を明らかにした。葉量はパイプモデルに基づく簡易手法で推定した。幹現存量間伐率が大きいほど林分葉量の増加率は大きい傾向を示し、林分葉量の増加率は低標高の林分で大きかった。対数変換した葉量と幹現存量生産速度について、地域ごとに異なる直線で回帰することができた。直線の傾きは高標高で1.066、低標高の2地域で0.638~0.661であった。これらの関係から幹現存量間伐率に対する葉生産効率 (葉量あたりの幹現存量生産速度) の変化を予測した。葉生産効率は、低標高の林分では幹現存量間伐率が大きいほど増加するが、高標高の林分では増加しなかった。間伐による幹現存量生産速度の増加を葉量増加による効果と葉生産効率向上による効果に区分して評価した。葉量の効果はどちらの地域でも幹現存量間伐率が中程度で大きくなったが、葉生産効率の効果は低標高の幹現存量間伐率の大きい林分で大きかった。以上の結果より、葉生産効率は地域による間伐影響の違いを評価するうえで有効な指標であることが示された。
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