抄録
後期胚発生蓄積 (late embryogenesis abundant, LEA) タンパク質は、種子発達過程の後期および環境ストレスを受けた栄養組織で蓄積することが知られている。LEA タンパク質は植物だけでなく、動物、真菌類、細菌類にも存在する。LEA タンパク質は多様な構造と遺伝子発現様式を持ち、環境条件の不利な変化から細胞を保護していると考えられている。本研究では、ポプラ (Populus nigra L.) の LEA タンパク質の性質を明らかにするため、2つの LEA タンパク質、PnLEA1 と PnLEA2 の cDNA を単離し、解析を行った。予想される PnLEA1 タンパク質と PnLEA2 タンパク質は構造的に異なっており、PnLEA1 は1つの LEA_1 ドメインを持つ LEA_1 ファミリータンパク質、PnLEA2 は2つの LEA_2 ドメインを持つ LEA_2 ファミリータンパク質と同定された。PnLEA1 遺伝子と PnLEA2 遺伝子は、根および葉で発現していた。PnLEA1 の遺伝子発現は、乾燥、高塩、および低温ストレスで増加した。PnLEA2 も乾燥および高塩ストレスで遺伝子発現を増加させたが、増加の程度は PnLEA1 よりも小さかった。PnLEA1 または PnLEA2 を過剰発現した大腸菌は初期の耐塩性が向上した。これらの結果は、ポプラにおいて PnLEA1 および PnLEA2 が環境ストレス耐性機構に関与することを示唆している。