2023 年 22 巻 1 号 p. 29-34
林木育種事業では多数の系統を同時に扱う大規模な人工交配作業を行う。人工交配作業は対象樹種の開花時期に、袋かけ、花粉採集、花粉の注入といった一連の作業を集約的に行うため、効率的に作業を行う必要がある。花粉銃は花粉の注入作業に必要な道具の一つであるが、近年、製造販売が中止され、入手が困難になっている。そこで、市販の資材等を用いて花粉銃の自作を試みた。その際、花粉の注入作業の効率を向上させるために、花粉の保存、貯蔵に用いるプラスチック容器を花粉銃に直接取り付けることができるように工夫した。この自作花粉銃の重量は従来のものより0.6 ~7.7 g 重かったが、充填可能な花粉量は1.9 ~2.8 倍、花粉の噴出量は1.4 ~2.7 倍であった。この結果は、自作花粉銃によって有効な人工交配が行えることを示唆する。また、花粉の容器の脱着は容易であり、花粉の充填・補充作業が従来より簡略化されると考えられた。