2025 年 24 巻 1 号 p. 1-13
近年、「森林サービス産業」や「Forest Style」等の森林空間の価値を再評価する取り組みが着目されているが、都市部では森林を散策したことのない人が年間に約半数にも及ぶ懸念もあり、まずは人々が森林をどのように捉えているのかを把握し、それをふまえ森林空間利用の推進について普及・啓発方法を検討するのが有効と思われた。一方、昨今SNSデータを活用した公園や森林などの緑地の利用に関する研究が行われ、人々の森林に対する利用イメージを客観的に把握することが可能となっている。そこで、本研究では人々の自然や森林に対する希求が高まったコロナ禍の2年目にあたる2021年の5月を調査対象期間とし、SNSデータを分析して森林の利用イメージや公園との比較からその特徴を検証した。その結果、利用者は “公園” には子供を遊ばせる目的で、“森林” には主に森林浴による癒しを期待して訪問していること、“公園”、“森林” ともに、「花」の観賞や「写真」撮影での利用が多いことが明らかになった。また、SNSにおいて“森林”は身体的体験を伴わない概念的な対象として使用されることが明らかとなった。さらなる森林空間の利用促進にはコロナ禍を契機に新たに森林を訪れた利用者が森林空間の恵みを合理的に享受できるよう、利用者の感覚を適切に刺激し、各自の体験を意識化してくれるようなインタープリター等を活用することが有効だと思われた。