抄録
緒言:肥満や高中性脂肪・高コレステロール血症などの脂質異常症は年々増加傾向にある.脂質異常症の発症には日常の食生活・食習慣が大きく関与しており,これらの予防には食を含めた生活習慣の改善が重要となる.その中で機能性食品が持つ役割は今後ますます重要になってくると考えられる.我々は豚肝臓抽出物(PLH)の脂質代謝に与える影響を高脂肪食負荷モデルマウスおよびヒト肝癌由来細胞株HepG2を用いて検討した.
材料及び方法:1)C57BL/6マウス(雄,6週齢)を通常食+水道水(ND群),高脂肪食+水道水(HFD群),高脂肪食+2%PLH溶解水(PLH2%群),高脂肪食+5%PLH溶解水(PLH5%群)の4群(各n=5)に分類し,28日間各飼料および飲料水を投与した.その後,血清と肝臓を採取した.血清は血液生化学検査および血中脂質プロファイリングに,肝臓は組織学的検査に供した.
2)HepG2細胞2.5×105個を12穴プレートで2日間培養後,未処理培地(NT群),オレイン酸添加培地(OA群),オレイン酸+PLH添加培地(最終濃度2 mg/ml, OA+L群)に交換し,さらに2日間培養した.その後RT-PCRにより脂質代謝関連遺伝子の発現量を測定した.
結果:1)Low-density lipoprotein(LDL)コレステロール濃度がPLHを投与した2群で低下傾向を示し,PLH5%群ではHFD群と比較して有意に低下した(p<0.05).
2)OA+PLH群はNTおよびOA群と比較してLDLRの発現量の増強が認められた.
考察:今回の研究によりPLH摂取によって肝臓の脂肪蓄積が減少し,またLDLRの発現が増加することによって血中LDLコレステロール濃度が減少することが判明した.今回の結果から豚肝臓抽出物は脂質異常症の改善に有効な機能性食品となりうる可能性が示唆された.