Functional Food Research
Online ISSN : 2434-3048
Print ISSN : 2432-3357
皮膚アレルギーの動物モデル—機能性物質のスクリーニングと評価—
向 亮松田 浩珍田中 あかね
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ジャーナル オープンアクセス

2018 年 14 巻 p. 23-29

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抄録
 何らかのアレルギーに罹患する患者は世界的に増加しており,化学物質,昆虫,フルーツなど,花粉やハウスダストマイト(家ダニ)のような従来の抗原物質とは性質の異なる新たなアレルゲン物質やハプテンが毎年のように報告されている.軽度あるいは季節性の症状を有する患者を含めると,先進国におけるアレルギー罹患率は全人口の30%にものぼるといわれている.とくに,喘息,蕁麻疹,食物アレルギー,花粉症,アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患は,患者だけではなく家族の生活の質をも低下させ,病勢によっては強いメンタルストレスを引き起こしたりして,社会活動に影響を与えかねない深刻な問題となっている.
 新薬や治療法の開発には多角的な病態の理解が必須であり,ヒトのアレルギー疾患を再現する動物モデルは,患者からは得られない貴重な情報を提供する研究のパートナーである.またヒトで問題となるプラセボ効果(効かないはずの対照物質が効いてしまう現象)やノセボ効果(効かないはずの対照物質が副反応を起こしてしまう現象)による結果の修飾が起こらないことから,薬効を的確に把握するために,疾患モデル動物を用いた評価系は極めて有用である.とくに,近年推奨されるセルフメディケーションにおいて,アレルギー症状を緩和したり軽減したりする可能性のある候補物質,あるいはサプリメントのスクリーニングには高いニーズがある.
 本稿では,現在多くの実験に用いられている実験小動物の受動感作モデル,能動感作モデル,遺伝子操作モデル,自然発症モデルの利点と問題点を概説し,我々の研究グループが発見したヒトアトピー性皮膚炎自然発症モデルNC/Tndマウスの特徴を紹介する.また,ヒトと共に暮らしヒトと同じ病気を自然発症することで注目されつつある伴侶動物のイヌを用いた動物臨床試験として,アレルギー性皮膚炎を発症した伴侶犬をリクルートして実施した牛乳由来リン脂質の投与試験や,新規の皮膚洗浄療法の試験についても概説する.さらに,実験小動物で再現することが難しい蕁麻疹を自然発症するウマについても紹介し,比較動物医学的見地から今後のアレルギー研究への応用を考察してみたい.
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© 2018 ファンクショナルフード学会
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