2020 年 16 巻 論文ID: FFR2020_p51-56
超高齢社会の日本において,食による生活習慣病の予防が注目されている.野菜や果物など農産物に含まれるフラボノイドやカロテノイドなどの機能性成分は,抗酸化作用といった健康維持に効果を持つことが明らかになってきている.液体クロマトグラフィー質量分析(Liquid ChromatographyMass Spectrometry; LC-MS)など,質量分析法は多彩な農産物中の機能性成分の定性および定量分析に広く用いられている.近年,質量分析法で用いられるイオン化法の一つであるマトリックス支援レーザー脱離イオン化法(MALDI)を応用した技術として,質量分析イメージング法(MSI)が開発された.MSI は試料表面をイオン化させ,直接質量分析することにより,任意のマススペクトル中のピークを選択し,試料表面上での分布強度を得ることが可能である.MSI 技術の開発により,様々な化合物の分布解析が農産物の組織切片上で可能となってきた.本研究では,農産物のうちミニトマトの組織切片を用い,MSI による機能性成分の分布解析を行った.これらMSI 技術の進歩により,農産物の成分分布から,鮮度・劣化指標,農薬検出などの評価と農産物の高付加価値を担保する品質管理法への応用が示唆された.