Functional Food Research
Online ISSN : 2434-3048
Print ISSN : 2432-3357
総説
ジェロサイエンスとファンクショナルフードの接点,炎症抑制と栄養管理
丸山 光生
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ジャーナル オープンアクセス

2023 年 19 巻 p. 10-15

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抄録

20 世紀の後半から半世紀以上も更新し続けるわが国の100 歳以上の高齢者が2022 年9 月には9 万人を超え,私たちが自分たちの寿命の延伸と人生100 年時代を意識する機会も増加した.それに伴い,高齢者の生活の質(QOL)を高め,健康寿命の延伸を目指すために,加齢に伴って低下する様々な生体機能の変化との関連が多面的,包括的に議論されている.一方,老化の要因に関する多くの研究も進められ,日常,規則正しい食生活,口にする食品の栄養バランスと腹八分目の「栄養」や生活習慣としての適度で習慣的な「運動」,睡眠の質の向上やストレスの少ない環境での「コミュケーション」の充実とバランスなどが,健康長寿の秘訣と考えられてきた.その一方で,加齢とともに身体に静かに蓄積される慢性炎症や免疫系をはじめとする生体機能の低下なども大きな老化の要因として注目されている.老化研究もこうした地球規模の高齢化社会の到来に伴って進化と多様化を繰り返してきた.本総説ではこれまで様々な生物で進められてきた寿命や老化研究の流れを紹介し,寿命遺伝子の発見や老化のメカニズムから紐解いたエビデンスをヒトの老年医学により近づけるものとして位置づけるジェロサイエンス研究について概説する.そして,一例としてプレバイオティックス乳酸菌を老化に伴い生体内で生じる細胞老化,炎症性サイトカインの産生とそれを制御する腸管,さらには全身における生体防御系を検討した結果を健康寿命の延伸と深く結び付くファンクショナルフードによる慢性炎症の抑制や栄養介入が個体老化に及ぼす可能性や影響についても紹介したい.

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© 2023 ファンクショナルフード学会
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