抄録
運動を司る骨格筋量とその機能は,長期臥床や宇宙滞在などの不動による力学的負荷の減少(廃用)により負に制御され,運動による力学的負荷の増大(加重)では正に制御されることが分子生物学的に明らかとなってきた.これまでに,筆者らは宇宙実験,地上の廃用性非加重,遠心加重を用いた異なる力学的負荷を対象としたマウスモデルの検討を行ってきた.筋肥大モデルとして遠心飼育装置によりマウスを2 g加重力環境下で2週間飼育した.廃用性非加重モデルとして後肢懸垂下でマウスを14日間飼育し,骨格筋の解析を実施した.下肢骨格筋量はµCTによって測定した.ヒラメ筋(遅筋)と前脛骨筋(速筋)もしくは大腿四頭筋(速筋)からtotal RNAを抽出し,RNA-seq解析を実施した.加重力マウスではヒラメ筋,大腿四頭筋ともに有意に骨格筋が肥大した.RNA-seq解析の結果,2 g加重力によってヒラメ筋では1,016遺伝子,大腿四頭筋では271遺伝子が発現変動遺伝子(DEGs)として検出された.さらに,筋萎縮性遺伝子についてはヒラメ筋と大腿四頭筋で同程度の抑制が認められ,いくつかの因子についてはヒラメ筋でのみ促進が認められた.また,宇宙飼育,廃用性非加重では骨格筋萎縮が認められ,特にヒラメ筋で顕著であった.RNA-seq解析の結果,後肢懸垂によってヒラメ筋では1,828遺伝子,前脛骨筋では1,496遺伝子がDEGsとして検出された.ヒラメ筋と前脛骨筋ともに筋萎縮性遺伝子群の発現が亢進した一方,ヒラメ筋のみ相加的に筋萎縮に関連する遺伝子群などの発現変動が認められた.本稿ではこれら力学的負荷に相関した筋量とその機能制御について,最新の知見を交えて概説する.