2013 年 39 巻 p. 49-59
本研究は,現代東京で地域の気候特性を活かした空間設計手法に関する知見を江戸町人地より得ると同時に,建築史の分野においても夏季の屋外生活空間の熱環境を定量的に明らかにすることを目指し,限定的な条件下ではあるが,江戸時代後期の江戸町人地の町屋敷における空間構成と緑を検討し,これらの影響を定量的に把握することを目的に,複数の町屋敷を対象に夏季表面温度分布を数値シミュレーションより再現し,表面から周辺大気への顕熱負荷をより評価した。結果,低層高密な江戸町人地では町屋敷内の樹木よりも明地・空地の草地が日中の顕熱負荷の低減に貢献すること,および全ての町屋敷が夏季の熱帯夜の発生要因となっていないことを確認した。