2019 年 8 巻 1 号 p. 1-7
富山県で生産している優良無花粉スギ「立山 森の輝き」の実生苗は、メンデルの遺伝の法則により約50% の頻度で有花粉の苗が混ざるため、出荷前にジベレリン処理をして強制的に着花させ、無花粉の苗を選抜している。その際に、シベレリンの影響で苗が徒長し大苗になる傾向がある。本研究では徒長した苗の梢端部分(5 cm程度)を切ることによって徒長を抑制し、さらに切った梢端を挿し木することによって無花粉の挿し木苗も同時に生産する方法について調査した。無花粉の実生苗100個体から梢端を採取し、バーミキュライトに挿しつけしたところ、その発根率は100%だった。翌年、それらをMスターコンテナに移植し育苗したところ、移植当年中で出荷可能な大きさになった。梢端を切りとった実生苗は、その後、切り口から数本の梢端が出てきたが、主軸となる梢端のみを残すことで、多枝になることもなく順調に生育した。これらのことから、本手法は無花粉の実生苗と挿し木苗を同時に生産でき、さらに梢端切除による実生苗の徒長抑制によって得苗率が向上する効果もあるため、新たな増殖方法として有望であると考えられた。