園芸植物として利用されるアジサイは、その野生種であるガクアジサイを含めいくつかの異なる花型が知られている。その中でも手まり咲き型の園芸品種は野生には見られない特徴的な花型として多く植栽されている。しかし、この手まり咲き型は静岡県伊豆半島東部の城ヶ崎海岸において野生型の個体と同所的に見られ、この花型が自生である可能性が考えられる。この仮説を検証するためにMIG-seq 法を用いた一塩基多型(SNPs)の検出を行い、伊豆半島の石廊崎および伊豆諸島の神津島の自生個体も加えた遺伝解析を行った。検出された281 SNPsを用いて解析を行った結果、神津島と伊豆半島の集団は明瞭に区別でき、伊豆半島の城ヶ崎海岸と石廊崎集団はゆるやかには区別できた。 城ヶ崎海岸の野生型と手まり咲き型を含む変わり咲き型はヘテロ接合度の期待値に差が見られず、遺伝的関係は高い類似性を示した。加えて、城ヶ崎海岸内において地理分布と遺伝的類似性は弱い空間自己相関を示した。これらの結果から、城ヶ崎海岸の手まり咲き型の個体は自生であると考えられ、重要な遺伝的資源として保全の重要性が高いと言える。
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