抄録
塩ビ床材には、塩ビ樹脂と共に可塑剤が配合されており、その多くはDOP(フタル酸ビス(2エチルヘキシル)が使用されている。しかし、近年、DOPの人体への影響の懸念から欧米では使用を制限する動きが活発化してきている。DOPの代替可塑剤としては、DINCHやDEHTが挙げられるが、日本の場合、アルコールの原料事情からDEHTが有利である。本研究では、DEHTを用いた塩ビ床材のVOCに関し検討を行った。アルカリ水に接触した際に放散される成分は何れも、可塑剤の加水分解物である2エチルヘキサノールであるが、DEHTの場合は、DOPの約13倍で有った。この原因を探るべく顕微IRにより、塩ビシート内の可塑剤の分布を測定した。その結果、分布には大きな差が無いことがわかった。次に可塑剤の加水分解機構を考察し、加水分解の速度がDEHTの方が大きいと推定した。